Andrea Perry「Rivers of Stars」

昨晩は習い事に行く息子を送った後、東の方角を向いたら、山の上にぽっかりとまん丸いお月様が。そうだ、中秋の名月。こうやって近所の山から満月が昇ってくるところを見ると、必ず「坊主」の花札を思い出す。赤い背景、黒い山の上にまっ白い月が浮かぶ、とても印象的なデザイン。

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この意匠は「芒(ススキ)に月」というらしい。たしかに、よく見ると黒い山に見えるものにはススキの穂のような線が入っている。山じゃないのか。いずれにしても、山から昇ってきたばかりの満月は、心理的にこれぐらいズームアップされて見える。昨晩の夜空は澄み切っていて、とてもいい中秋の名月だった。


10月の満月といえば、自分が真っ先に思い浮かべるのはアンドレア・ペリーの3枚目のアルバム、「Rivers of Stars」である。ジャケのイラストにはとても大きく明るい満月があしらわれているし、10月の落ち葉をテーマにした大名曲、「Leaves of October」が入っている。2年前、当ブログを立ち上げたばかりの頃(ブログを始めたのも10月だった)に、この曲についてつらつらと述べた記事を書いた。アンドレア・ペリーの作品は配信で全部聴けるけど、好きすぎるので「Two」と「Rivers of Stars」はCDでも購入した。「Rivers of Stars」はCDを手にして以来、以前にも増してよく聴くようになった。夜中にパソコンの電源を切って静かに聴くと本当にしみるアルバムなのだ。アンドレア・ペリーはマルチプレイヤーで、ドラム以外の全パートの演奏、録音、プロデュースと、すべて独力でこなしている。宅録とかローファイとかそういう世界ではなく、演奏・録音ともに恐ろしいほどクオリティが高い。ギターの音がとてもいい。アートワークとクレジットを眺めながら、音に集中して浸り込むことで、良さが何倍にもなる。このアルバムの月のイメージも、パソコンやスマホの画面に出てくる小さなジャケ画像だけではそれほど印象に残らなかったが、CDを見るとライナーの内ページにも裏にも、CDの盤面にも満月が出てきて、月が重要なテーマであることがよくわかった。

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アルバム全体に夜のイメージが強くて、タイトル曲の「Rivers of Stars」をはじめ、「Day Moon」「Let’s Not Go Out Tonight」と星・月・夜をテーマにした曲が並ぶし、「Broken Heart」もひっそり夜中に聴いていると、「Free me from this broken heart tonight」というフレーズがとても刺さる。窓から見えるビルの谷間から昇る満月、窓の外に向けられた望遠鏡、部屋の壁に立てかけられたギター、コーヒーカップ、飲みかけのワイン、食べかけのチーズ。開いたままのノート。月明かりに照らされた部屋の主はついさっきまでそこにいたようだけど、今はいない。このイラストを掲げたCDジャケと同じように、このアルバムの音楽からは、ひとり静かに過ごす夜中の虚しさと痛みと、優しい月の光に包まれる心地よい安らぎを同時に感じる。自分が集中して音楽を聴くのは必ず夜中。CDで手に入れてから、そんな時間の友として大切さがぐっと増したアルバム。

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黒い背景に白い枠のデザイン、「Let It Be」っぽいといつも思う

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