By The Time It Gets Dark(Sandy Denny/Yo La Tengo/The New Mendicants)

ティーンエイジ・ファンクラブのノーマンと、スカッド・マウンテン・ボーイズ~パーニス・ブラザーズのジョー・パーニスの二人が組んだニュー・メンディカンツ。今のところアルバムを1枚残したきりの彼らだけど、その「Into The Lime」はとても素晴らしい作品で今もよく聴いている。このアルバムにはカバーが1曲入っている。


実は最近まで、自分は「By The Time It Gets Dark」がサンディ・デニーのカバーであることを知らなかった。これも彼らのオリジナルだと思っていたんだけど、先日別の記事でヨ・ラ・テンゴの「Little Honda」について触れたのをきっかけに、これをタイトル曲にした6曲入りカバー集ミニアルバムのCDを久しぶりに聴いて、ここにも同じ曲が入っていることに今さら気が付いた。

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数年前、アメリカ出張の際に中古で買ったこのミニアルバムも自分はかなり気に入っていて、何度も聴いていたのに、なぜかヨ・ラ・テンゴの「By The Time It Gets Dark」は自分の中で印象が薄くて、ニュー・メンディカンツと同じ曲であることに今まで気付かずじまい。もちろん、作者バージョンも聴いたことがなかった。


サンディ・デニーのことも、自分はよく知らない。フェアポート・コンヴェンションも少ししか知らないし、ソロ作もまだ聴いたことがない。本当に知らないものだらけである。先日、ジャクソン・C.フランクの「Blues Run The Game」の訳詞を書いたとき、彼のWikipediaなどを調べていたら、サンディ・デニーの名前が少し出てきた。1965年頃、フランクがポール・サイモンと同時期にロンドンで活動していた頃に、デニーとも知り合って、彼女にギターの手ほどきをしたり、看護の仕事をやめて音楽に専念するように勧めたりしたという。こんなつながりも、ブログを書いている自分にとってはまったくの偶然である。このネット時代、その気になればその場に座したまま、興味を持った音楽をいくらでも掘ることができるのだから、もうちょっとちゃんと聴いてみよう。

作者のサンディ・デニー本人は、「By The Time It Gets Dark」を生前に公式発表していない。1978年に31歳の若さで亡くなってしまい、この曲の本人バージョンはデモ録音でしか残っていない。没後に出たボックスセットでしか聴けなかったレア曲のようなのだけど、メアリー・ブラックというアイルランドのメジャーな歌手が1987年にカバーしたり、先述のヨ・ラ・テンゴが取り上げたりと、根強く地道に歌い継がれてきたのは楽曲の持つ力ゆえなのだろう。


ニュー・メンディカンツのバージョンに話を戻すと、自分にとってこの曲の良さが一番わかりやすく感じられるのが、ノーマンが歌うときなのである。「Into The Lime」のバージョンでは、ジョー・パーニスがリードを歌って、ノーマンが途中から上のハーモニーで加わる。この、ノーマンの歌声が入るときに、良さがぶわっと溢れ出てくる感じなのだ。上に載せたライブバージョンでは、ヴォーカルの役割が入れ替わってノーマンがリードを取っていて、最初からこの良さを味わうことができる。二人のヴォーカルがハモるスタイルでこの曲をカバーしているのは、色々と聴いてみた限りではヨ・ラ・テンゴとニュー・メンディカンツだけなんだけど、ノーマンとジョーはヨ・ラ・テンゴ版を参考にしたんだろうか。ヨ・ラ・テンゴの演奏は、サンディ・デニー本人を含めた他の誰とも似ていなくて、ぼんやりと空中を浮遊するような彼ら独特のもの。

「By The Time It Gets Dark」の歌詞は「過ぎた昨日の悲しみはもう忘れよう。今日はまた新しい日が始まる。日が暮れる頃には何事もすっかり変わって、また笑えるようになるさ」という、落ち込んだ大切な人を温かく慰め、元気づける内容。TFCの「The Darkest Part Of The Night」とも共通するものを感じる。2019年東京公演1日目の1曲目に演奏され、前に当ブログに訳詞を載せたこともある、近年のノーマン曲では自分が一番好きなもの。この曲と同じように、年齢を重ねたノーマンの歌声からにじみ出る優しさが「By The Time It Gets Dark」という曲の魅力を余すところなく体現していて、まるでノーマンのオリジナルのように聞こえるし、自分の心にはこの声が一番深く染み込んでくる。

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