Colin's Hermits「Strawberry Fields Forever」:XTCのデイヴとアンディによるビートルズカバー

1990年に発表された、1967年のサイケなヒット曲のカバーを集めたコンピレーション盤「Through the Looking Glass: 1967」に、Colin’s Hermitsというバンドによる「Strawberry Fields Forever」のカバーが収録されている。これは、自分が知っているビートルズカバーの中で、少なくとも原曲再現度の点では最高の出来だと思う。もちろん自分はそんなレコードは持っていなくて、だいぶ前にTwitterで教えてもらったもの。


Colin’s Hermitsというバンドの実体は、XTCのリードギタリスト、デイヴ・グレゴリーによる一人ユニット。すべてのパートをデイヴ一人でこなしている。この曲では、ヴォーカルだけアンディ・パートリッジに手伝ってもらっている。要はXTCの変名バンドの一つと言ってもいい(バンド名に「Colin」が入っているのにコリン・ムールディングだけ不参加なのがおかしい)。それにしてもデイヴ・グレゴリー、凄すぎる。もちろん、あのリンゴの凄まじいドラムのフレーズや逆回転シンバルなど、押さえるべきポイントをしっかり押さえた忠実度の高さはさすがXTCなのだけど、それだけではここまで胸ぐらをつかまれるような説得力にはならない。よく聴けばドラムやストリングス、ブラスの音色は相当デジタルっぽくローファイで、インド楽器(スワルマンダル)なんてチープなポン・ポン・ポンという電子音だし、エンディングに出てくる部族の踊りみたいなメロトロンもシンセでポロポロポロ……と適当な感じ。全体にだいぶ安っぽい音で構成されているのに、あの「Strawberry Fields Forever」の鬱々とした迫力、他者を拒絶する密室的な雰囲気だけは、この上なく完璧に再現されている。同じ楽器を使えば良いというものではないのだ。この曲の完コピでまず思い浮かぶ有名なものはトッド・ラングレンが1976年の「Faithful」に収録したバージョンだけど、切迫感がまるで違う。トッド版が「ロック名曲」としての「Strawberry Fields Forever」を忠実になぞったコピーならば、デイヴとアンディのものは「1967年のビートルズ」の空気感にぐぐっと肉薄した音世界の再現、という距離の違いがある。

1967年のビートルズ。デビューして間もなく巻き込まれたビートルマニアの狂騒に疲れ果て、前年の8月末にコンサート活動を一切停止してスタジオに引きこもり、世界(少なくとも音楽の)を大きく変えることになる、恐ろしく濃縮度の高いブツを集中的にこしらえていた時期である。急に音沙汰がなくなってしまったものだから、世間ではビートルズ解散説もささやかれていたという。あのサージェント・ペッパーズ前夜のビートルズの密室的な空気感、熱量をここまで忠実に再現したデイヴ・グレゴリー。彼がXTCで果たした役割を自分はよく分かっていなかったけど、こんなものを一人で作り上げるとは、やはりただ者ではないと思い知った。そして、この曲のジョン役にアンディ以上の適任者がいるだろうか。XTCの顔役だったアンディも、かつては活発にこなしていたライブ活動にある時期から耐えられなくなり、ファンの前で演奏するのを一切やめてスタジオに引きこもる、という道を選んでいる。こんなところも、67年以降のビートルズとよく似ている。XTCの二人がこの曲に関われば、こんなリアルなものになるのは必然なのかもしれない。

Colin’s Hermitsはもう一曲、1996年に「I Am The Walrus」のカバーも残している。空気感まで再現する迫力度では「Strawberry~」に及ばないものの、こちらも原曲を細部まで執拗にコピー。こちらはヴォーカルもデイヴが担当している。これを聴くまで、彼が歌えるとは知らなかったけど、渋い声である。

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