ダークホースとの出会い

追われるばかりの日常が飛ぶように過ぎていく今日この頃。41年前にジョージの「慈愛の輝き」が初めて世に出た記念日である本日の朝も、目覚めた途端に「愛はすべての人に」のイントロが世界を優しく満たしたりはしなかった。朝の散歩中にはその曲ではなく、「Soft-Hearted Hana」のエンディングがフェードアウトせずに、ピッチがふらふら上がったり下がったりしながらエンドレスに脳内で流れていた。道ばたの斜面に福寿草の黄色い花が咲いているのが見えたけど、気持ちはそんなに動かなかった。気温は高くても、春はまだまだずいぶん遠くに思える。そんな気分でも、このアルバムの曲のどれかは、何らかの形で自分に寄り添ってくれる。


「慈愛の輝き」は最初から全貌を聴いていたわけではない。先に出会ったのは、1989年に出たベスト盤CD「Best Of Dark Horse 1976-1989」に収録されていた「Blow Away」「Here Comes The Moon」「Love Comes To Everyone」の3曲。それまで、当時ヒットしていた「Cloud Nine」は別として、ジョージのダークホース期の名作群はまったく自分の世界に入ってきていなかった。今では信じがたいことだが、ダークホース期について80年代当時の一般的な評価は「低迷期」であり、「All Things Must Pass」とアップル時代のベスト盤以外、ジョージが地道に作り続けてきた過去のソロ作品をディスコグラフィ以外の実物として見かけた記憶がない。しかもそのベスト盤は、A面にビートルズ時代のジョージ曲、B面に70年代前半のソロヒット曲がいくつか並んでいるだけ、といういかにも不遇なもの。当時、ジョージは遠かった。

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80年代後半のこんな寂しい状況を吹っ飛ばしたのが、87年の「Cloud Nine」で大復活を遂げたジョージ自身の華々しい活躍と、LPからCDへと急激に切り替わっていく時代の流れだった。過去の名盤のCD再発がブームになり、70年代ロックがぐっと身近になった。それでも、ジョージのダークホース期のアルバムがCDで一挙再発になったのはやや遅くて、91年のことだった。オリジナルアルバム再発の2年前に出た「Best Of Dark Horse 1976-1989」は、ジョージの真の魅力を1枚のCDにまとめていち早く教えてくれた重要なアルバム。繰り返し繰り返し聴いた。「低迷期」なんて、まったくとんでもなかった。そして、この最高にすばらしい充実期は、当時リアルタイムで続いていたのだ。時間の流れを振り返ると、87年の「Cloud Nine」とセット・オン・ユーの大ヒットから始まり、88年のトラベリング・ウィルベリーズ、89年のダークホース期ベスト、という1年ごとの三段跳びで自分はジョージファンとしてステップアップしていったことになる。さらに、90年にはウィルベリーズの「Volume 3」、91年にはダークホース期の全アルバム再発と来日公演。87~91年は、今にして思い返せば夢のような5年間だった。当時の自分は10代後半。学校生活は最悪だったが、音楽に支えられていたのだとあらためて思う。

ベスト盤の2曲目に入っていた「Blow Away」は、昔も今も自分にとって大切な曲。当ブログで何度も話題にしているこの曲のシングルがリリースされたのも、ジョージ公式YouTubeによれば1979年2月14日だという。じめじめと雨が降り続けば気分がふさぎ、暖かな日差しが降り注げばハッピーになる、天候の善し悪しに翻弄される気分を歌ったこの曲は、自分の実感にとても近い。ジョージのことをとても身近に感じられる曲なのだ。やっぱり今日は記念すべき日である。

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