でんでんむしのかなしみ

一匹のでんでん虫がある日気づいた。自分の背中の殻には悲しみがいっぱい詰まっている。どうすればいいんだ。色々なでんでん虫に尋ねてみると、みんな同じように背中の殻に悲しみをいっぱい背負って生きていたのだとわかる。自分は自分の悲しみをこらえて生きていかなければならない。という新美南吉(ごんぎつねの作者)の童話。小学校から息子がもらってきた学校便りのプリントに書いてあった。まあ自分が大人になって近年感じているのも似たようなこと。十代の頃はそんな風には思えなかった。周りはみんなスマートに楽しそうにやっている。つらいことなんてないんだろう。自分だけが醜くて性格が暗くて人と仲良くできない。こんな自分に誰がした。劣等感の塊。

今の自分が思い浮かべるのは、地面に無数に空いた穴。人間は皆、その穴の中でひとりずつ暮らしている。いくらたくさんの人に囲まれて賑やかに幸せそうに見えても、本質は各自の穴の中にあってそれぞれの苦しみを生きている。その穴は絶望と言ってもいいのかもしれないけど、べつに悲観することはない。ただの現実認識。周りは誰もが恵まれて幸せで自分だけが醜く孤独だ、と思い込むのが一番しんどい。無差別乱射事件や通り魔事件がなぜ起こるのか。自分が劣等感の塊だった頃のまま成長していたらどうなっていたか。自分は音楽を愛していて、音楽に導かれるままに暗がりから抜け出せたと思う。本当は音楽好きの人間というより音楽そのものになりたい。どうしたらなれるんだろうね。

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近所の神社の落ち葉。もうでんでんむしの季節ではないようである。

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