東京の空

昔から正月が嫌いで、元旦の晩にいったん正月嫌いテーマのブログ原稿を書き始めたが、新年からそんなもの載せることもないか、今年はできる限り正月を楽しもうじゃないか、とその文章を仕上げるのはやめた。翌朝、東京の実家に出かけて両親弟妹と会い、ホテルに一泊したのち、東京タワーに登ったり、ずっと前にもらって死蔵していた三越の商品券を消費しに銀座に行ったりしてきた。人混みや渋滞には疲れたけど、正月嫌いなりにわりと楽しく過ごせたので、やはりあの文章はボツにしてよかった。

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東京タワーの展望台から眺めた、東京の空

「東京には空がない」という有名な一節、東京生まれではないが東京育ちの自分は、見たり聞いたりするたびに心がざわっとしてしまう。「智恵子抄」は読んだことがないので、原典についてどうこう言える立場ではないが、自分はその空の下で育ったんですけど、とつい文句を言いたくなるのだ。エレファントカシマシが「東京の空」というアルバムを出したとき、インタビューで宮本浩次がその一節を引き合いに出し、東京で育った自分にはあれが空だった、だから「東京の空」というタイトルにしたのだ、という意味の発言をした。まさに自分の気持ちにドンピシャにはまった一言だったから今でも覚えている。彼らは北区赤羽の出身。自分も幼少期に暮らしていた団地は北区内にあって、母親の買い物についていく道すがら、陸橋の上からよく赤羽線(いまは埼京線の一部)の電車を眺めていた。そんなわけで妙に親近感がある。

エレカシのアルバムは大学生の頃によく聴いていた。観客全員が最後まで着席して静かに演奏を聴くという、当時の異様な雰囲気のライブも体験した。「東京の空」を最後にエレカシは路線変更してメジャーなバンドになり、自分の好みとずれてきて興味を失ってしまったので、エレカシについて書けることはあまりないけど、デビュー作から「浮世の夢」までの3枚は相当はまり込んで聴いたし、1988~89年の日本であの3枚が生まれたことにあらためて驚く。曲からもサウンドからも80年代末期っぽさが微塵も感じられない。あの時代にエレカシみたいなバンドがほかにいたとはとても想像できない。周囲から浮きすぎていて、ライブで観客と一緒に盛り上がる雰囲気じゃなかったのだろう。自分は91年頃、「生活」と「5」の間の時期に音楽仲間にすすめられて少し後追いで聴き始めたので、エレカシは90年代バンドの認識でいたけど、80年代末から数年先を行っていた90年代先取りバンドだった。

ビルやマンションで区切られていようと、東京に空はあった。中学生時代、楽しい毎日ではなかったけど、学校が午前中で終わる土曜日、うれしい週末が待っている昼の帰り道には、青い空から陽光が降り注いでプラタナスの並木をキラキラと輝かせていた。あの道や、初めて自分のギターを買った(今でも持っている)古道具屋があった地元商店街を今年も歩いた。ほとんど変わっていない。正月の東京は普段よりがらんと空いているし、真冬の空は青く澄んでいるので、東京の空を一番いい形で見られるのは正月なんだろう。

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