ドラマーになりたかった

中高生の頃、自分はブラスバンド部に所属していて、パーカッション担当だった。当時、本気で演奏したかったのはギターよりドラムで、目指すドラマーはもちろんリンゴだった。実家でご飯中、無意識に茶碗をドラム代わりに箸で叩いては注意されていた。結局、ドラムの演奏はある程度以上に上達することができず、ブラバンで新しく入ってきたすごく上手い後輩女子の演奏を見て、自分はこんな風には絶対にできない、と素質の違いを思い知らされた。ギターと違って両手両足、全身を使うので、運動神経の欠如している自分には向いていないのかもしれない。ドラムは今でも好きだし、もし自宅にドラムセットと防音室があったら一日中叩いてると思う。

ハル・ブレインについては、子供の頃から60年代の音楽を愛していたのでもちろん演奏は死ぬほど耳にしていたけど、あの名曲群で叩いているドラマーが誰なのか、ドラムを練習していた当時には認識してなかった。後年、自分にとって大切な曲の中で彼が演奏したものがあまりにも多くて驚愕することになる。いつの時代も優れたドラマーは貴重な人材なので、レコーディングに引っ張りだこになるのは容易に想像できる。こないだ触れたジョーイ・ワロンカーとか。ロックやポップスはドラムがしっかりしてないと自分は安心して聴けない。もっといいドラマーが入ればぐっと良くなるのに、というバンドがいくつも思い浮かぶ。ドラムはしっかり演奏するのがとても難しい楽器だし、少しでもヨタヨタするとはっきり聞こえてしまう。ほんとに重要。びしっと演奏を決められるドラマーは本当に格好いいし心から尊敬してしまう。

「Be My Baby」だったりビーチ・ボーイズの「Pet Sounds」だったりがハル・ブレインの名演として真っ先に取り上げられるけど、自分にとってはあのへんはフィル・スペクターやブライアン・ウィルソンの仕事という認識で、もっとオーソドックスな8ビートに、よくエンディングのフェードアウトで見せる爆発的フィルインとか、力強く歯切れの良いサウンド、音楽をぐいぐい前に進めるまさしく理想のロックドラマーという演奏ぶりが最高だった。良いドラマーはリズムを刻むだけでなくて音楽を前へ前へと動かすのだ。「Pet Sounds」だったら「素敵じゃないか」のオープニングを飾る決定的一打はもちろん、「Caroline, No」の演奏も推したい。あれにドラム入ってたっけ?最後の最後、静かに抑えてきた感情を一気に爆発させるところで絶妙のフィルインが入るのだ。あのごく短い見せ場をあそこまで完璧に決められるのは、神に選ばれしドラマーだけ。生命感あふれるポジティブな演奏で世界を幸せにして、90歳まで生きた彼自身も幸せな人生だったと信じたい。

ハル・ブレインがドラムを叩いた、たくさんの曲群は自分のまさしく血肉になっている。つまり、ハル・ブレインの演奏は自分の一部。ありがとう。ご冥福を祈ります。

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いまだに持ってる、ドラムの教則本

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