自作プレイリストをシャッフルして聴くこと

テレワークという働き方が切実な注目を浴びる事態になっているが、在宅勤務なら年季が入っている。まさかこんな2020年の現状を予期していたはずもないが、20年以上前、ジョージの「やりたくないことはやらなくていいんだ」という言葉を生きる指針にしていた自分は、どうしても苦手でやりたくないことをやらずに仕事して暮らしていくにはどうすればいいのか、ダメなことを次々と排除していった挙げ句、消去法的にこの働き方にたどり着いた。自分は色々ダメな人間なので、人並みの働き方がまともにできるとはとても思えなかったのだ。同世代で、本業として在宅勤務をしている人はほとんどいなかった。それでも、世間の外れ者であることには慣れっこだったし、自分には合ったやり方だと思えた。自分はチームワークが苦手で、ひとり仕事の方が絶対にましな働きができると思った。どんな仕事でもそうだろうが、向き不向きがある。自分は、これと決めたひとつの技術を生涯かけて磨いていく、職人になりたかった。

ひとりで在宅仕事をするには精神面でのバランスを取るのがとても大事で、自分にとってはやはり音楽が欠かせない要素。仕事中に音楽などもってのほか、静寂の中でないと集中して仕事できない、という人もいるけど、自分の場合は歌詞が日本語でない限り集中力には影響しない。日本語だとどうしても言葉が頭に入り込んで邪魔されることがある。よっぽど聴き込んだスピッツの旧作とか、はっぴいえんどとかだったらまだ大丈夫だけど、日本語の音楽をかけて仕事をすることはあまりない。作業BGMは、今のように便利な音楽配信がなかった頃、手持ちのCDから大量にパソコンに取り込んだMP3ファイルを長時間のプレイリストにまとめ、シャッフルして聴くことが基本。オンラインの音楽配信がすっかり生活の一部になった今でも、作業BGMは昔から蓄積してきたオフラインの音楽を流すことが多い。

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これも仕事BGMに混ざってて大丈夫なやつ。たまに思い出して聴きたくなる。

MP3すら一般的でなかった90年代から在宅仕事をしているのだが、当初はFMラジオ、もっぱらJ-WAVEを一日中かけてBGMにしていた。まだ新鮮な気持ちで仕事に集中できていたので、DJのおしゃべりに気が散ったりはせず、ひとり世間から取り残された感も紛らわせて良かったのだが、ラジオには特定の推し曲が集中的にかけられるパワープレイというものがある。嫌いな曲がパワープレイになったりすると相当しんどい。徐々にうんざりしてきて、自分の好きな曲だけを聴きたいと思うようになった。しかし長時間の仕事中にCDを取っ替え引っ替えするのは面倒すぎる。そんなとき、旅行先のホテルの部屋に入っていた自分で選局可能な多チャンネルの有線放送に出会い、これだ!と思って自部屋に導入した。ケーブル工事をしてもらい、チューナーを入れれば、月額数千円で440チャンネル聴き放題。世界中の新旧あらゆるジャンルの音楽が聴けて、インド映画音楽に出会ったのもこの有線がきっかけだった。ネットでストリーミングなど思いもよらなかった時代に、USEN440には本当にお世話になった。

ここまでの前史があって、圧縮オーディオ、MP3という画期的なものが暮らしに登場してくるのは2000年に入る直前だった。ストレージの容量がまだせいぜい数百MBという時代に、一聴しただけではオリジナルと違いがほとんどわからない音質で、何十枚ものCDをパソコンに取り込めるようになった。これは素晴らしい、とお気に入りのCDをどんどん取り込んだ。パソコンもCDドライブも低速で、1枚1枚のエンコードに時間はかかったが、一度ハードディスクに入れてしまえば何度でも聴ける。仕事には昔も今もWindowsを使っていて、当時のMP3再生ソフトはWinamp一択。このソフトにはプレイリストとシャッフルの機能が付いていて、取り込んだCDをすべてプレイリストにぶち込み、シャッフルして聴くというやり方を覚えた。これでとうとう、自分の好きな曲だけ延々とかかるラジオを自分の手で作れてしまったのである。シャッフルする曲数は多ければ多いほど長時間同じ曲がかからずにもつので、好きなCDはどんどん片っ端からMP3化してプレイリストに入れた。ジャンルがごちゃ混ぜすぎるのも落ち着かないので、ジャンル分けしたシャッフル用プレイリストをいくつか作った。こうして多ジャンル化、長大化していった作業BGM用プレイリストは、老舗ラーメン屋(いや、うなぎ料理店か?)秘伝のタレのごとく年月をかけて足したり引いたりしながら、今も使い続けている。現在はSpotifyでも同じように作業用プレイリストを作ってときどき流すけど、やはり昔から続いているオフラインのものには長年の愛着と安心感があって、今でもメインはこちら。プレイヤーもWinampのまま。最初の頃に取り込んだMP3ファイルの低いビットレートや2000年初頭のタイムスタンプを見ると、当時の暮らしの風景が思い起こされたりしてくる。ノスタルジーにも色々な形があるものだ。

自作プレイリストをシャッフルして聴くことを覚えてから、良くも悪くも音楽の聴き方が変わってしまった。シャッフルではときどきマジックが起こり、思いもよらない鮮やかな曲のつなげ方をしてきて、おおっ!となったりするのは楽しい。もはや、一番長時間聴く音楽がこのプレイリストになってしまったし、アーティストもアルバムもすべて融け合ってごちゃごちゃになった状態で聴いてばかりになって、音楽への接し方がぞんざいになった面も多々ある。だから近ごろは、ちゃんと音楽を聴くときはパソコンの電源を落として、オリジナルの曲順で1枚1枚の作品にしっかり向いて、ジャケやライナーを眺めながら聴くことも大切にしている。

ステイ・ホームが盛んに言われる最近、よく脳内で流れる。ジェリーフィッシュのベストも最初にパソコンに取り込んだCDのひとつ。

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