引っこ抜くな、植えろ(でも草むしりはする)

毎朝自然と早い時間に目覚めてしまうようになり、朝5時過ぎに起き出して散歩や庭仕事を涼しいうちに済ませる生活に切り替えてから、真夏の暮らしがうまく回るようになってきたと思う。何といっても、落ち着いて庭をいじる時間ができたことは大きい。これまで真夏の庭では、水やり、収穫、定期的な追肥などの作業を炎天下で焼け死ぬ前に急いで済ませ、さっさと室内に逃げ帰るしかなかった。早起き生活になった今年の夏は、まず散歩中にその日の庭で何をするかテーマを1つ決める。家に帰ったら、玄関で履き物を庭仕事用に履き替え、回れ右して庭に出る。毎朝のテーマは肥料やりだったり、支柱の立て直しだったり、草むしりだったりする。雑草という草はないけれど、さすがに生い茂り放題のジャングル状態では自分が何を育てているのかわからなくなり、園芸も何もあったものではない。本当に育てたい植物の生育を妨げるものは整理せざるを得ない。炎天下の草むしりなんて考えただけでうんざりしてしまうけど、涼しい朝早くにはとてもはかどる。15分ぐらいで済ませようと思っていても、やっているうちに気分が乗ってきて、30分以上かけて一心に作業してしまうこともよくある。1日1か所ずつでも毎朝少しずつこつこつと手入れをしていくと、野生の王国から徐々に庭らしい姿になってきて、自己満足に浸れる。やったらやっただけの目に見える成果があるので、早朝の草むしりは楽しいのだ。

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2個目の小玉スイカ、草に埋もれて見えなかったのが草むしりをしていたら見つかった。

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今朝開き始めた白いユリ。うっかり調子に乗りすぎるとこういうのまで抜きそうになる。

早起き鳥になる前、どうにか二度寝しようと布団の中で無駄にあがいていた頃の自分は、精神的にかなりドツボにはまっていた。自分に自信がなくなって足下のぐらつきが止められないモードになり、何をやっても駄目な気がして、実際やることなすことが裏目裏目に出てどうしようもない。自分の下す判断にも自信が持てず、やっぱり今のなし、これもなし、ああどうすればいいんだ、と情けなくあたふたするばかりの日々が続いた。ある夕方、蚊がたくさんいるのに庭に出て、散々かゆい思いをしながら植物の様子を見ていた。去年の庭では千日紅をたくさん咲かせていて、そのこぼれ種から出た1本が成長を始めていたのは知っていた。庭の中でも一番目立つ場所で、育てたいものがすでに植え付けてある真ん中から生えてきたのだ。太い茎から葉がたくさん広がり始め、このままでは混み合って邪魔に思えた。千日紅は今年は育てないのだから、ここにはいてほしくない。すっきりさせようと、深く考えずにそいつを引っこ抜いた。今でもそのときの音や感触を覚えているけど、ブチッ!と根こそぎ引き抜いて、ぽいっと捨ててしまったのだ。

部屋に戻ってしばらくすると、さっき自分がやったことを後悔し始めた。あんな風に抜いてしまったのは間違いだった、別の場所に植え替えれば花が楽しめたじゃないか、と。……ああ、また始まった、これも最近よくある気の迷いだ、とうんざりした気持ちになったけど、引っこ抜くな、植えろ、という思いがどうしても去らない。30分ぐらい迷った挙げ句、もう薄暗くなった庭にまた出て、空いていた鉢に培養土を詰め、庭の端に打ち棄てた千日紅を拾って植え直し、水をたっぷりやった。無思慮にブチッ!と引き抜いたのだからもう根に土は付いていなかったし、多少は切れてもいたはず。こんな乱暴な移植方法はどんな園芸サイトでも推奨するはずがない。完全にダメ元だけど、茎が太くて生命力は強そうな植物。やるだけでもやらなければ気持ちが収まらなかったし、うまく復活してくれて秋には花が咲けば嬉しいじゃないか。

そうやって半分やけくそ気味に鉢に植え付けた千日紅、太い茎のおかげでまっすぐ立ってはいたけど、最初のうちは日差しの下に置くとがっくりうなだれてしまった。それでも小まめに日陰に移したり、水やりをしたりと何日か様子を見ていたら、そのうち新しい葉も広がり始め、炎天下でもしゃんと立つようになった。無慈悲に引っこ抜かれて30分放置されても、ちゃんと根付いて生き延びたのだ。植え付けから2週間ほど経つと、赤紫の小さな蕾も出てきた。

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さらに1週間ほど経って、明らかに千日紅とわかる花が開き始めた。

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今では、最初に付いたてっぺんの花が完全に咲いたほか、下にも続々と蕾ができていて、10個かそれ以上ありそう。まさしく、華麗なる復活である。

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去年は密に植えていたので、1本でこんなにたくさん咲くことはなかったはず。鉢を独占した千日紅は、ブチッと引っこ抜かれたことなどなかったかのように、旺盛に育っている。捨てたままにしなくて本当によかった。そしてこの千日紅のおかげで、自分に対する信頼も少し取り戻せた気がする。自分の心から聞こえてきた、引っこ抜くな、植えろ、という声にあのとき従った結果、鮮やかな千日紅の花を楽しめているじゃないか。自分は間違いばかりやらかしているわけではないし、間違えてもやり直すチャンスはまだある。こうやって自分は植物に支えられて暮らしている。

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