Diving With Andy「Sugar Sugar」

ちょうど一ヶ月前ぐらいにCDを手に入れてから、自分内でひたすらずっと鳴り続けている音楽がある。Diving With Andyというフランスのバンドが2009年に出したアルバム「Sugar Sugar」である。夜な夜なCDをかけるのみならず、いわゆる脳内ヘビーローテーション状態でもあって、もう完全に中毒。1曲目と2曲目は聴いた瞬間にやられるキラーチューンだけど、3曲目以降もじわじわと病みついてくるものばかりで、結局のところ最初から最後まで全編が素晴らしい。脳内で鳴り響く頻度が一番高いのは、やはりアルバムのオープニングを飾るタイトル曲。


これを聴いてもらえれば自分からは何も書くことはない。ヴォーカルのけだるいハスキーな声も、耳について離れないメロディも、ギターと生ストリングスを効果的に配したちょっとドラマチックなアレンジも、非の打ち所がないとはまさにこのこと。女性シンガーとバックを固める男性2人からなる3人組で、近ごろの例によってフランスの公共ラジオ「FIP」で彼らの曲がかかったのが出会いだった。Spotifyとさよならしてから、このラジオには本当にお世話になりっぱなし。そのとき流れた曲は本作2曲目の「You Don’t Have To Cry」で、コード進行から何から、もう一発で完全に好みのど真ん中を射抜かれてしまって、当然この下にYouTubeリンクを張って紹介したいところなのだが、検索しても画質も音質も悪いライブのオーディエンス録画しか出てこない。このバンドが公式にアップしているYouTube音源は、上の「Sugar Sugar」と、別のアルバムからのもう1曲だけなのだ。さよならしたけどSpotifyにはアルバム全編が上がっているので、そちらを貼り付ける。

これだけクオリティの高い作品を残したバンドなのだから、当然のようにネットでも紹介記事が山ほど見つかるだろうと思いきや、検索してもあまり詳しいことがわからない。こういうことが最近はよく起こる気がする。森羅万象あらゆる情報が見つかるはずのネットで、本当に知りたい情報を誰も書いていない(少なくとも、探し出せない)のだ。Diving With Andyに関しても、ほとんど作品のリリース情報ぐらいしか見当たらず、音を聴いた個人の感想が読めるのは以下の記事だけ。

【今日の一曲:第25回】Diving With Andy / Sugar Sugar(社会不適合の日常。)

バンドに関するWikipediaページもフランス語のものしかない。そこから適当に推測した限りでは、2003年結成、2011年にメンバー1人が脱退しておそらく2人組になり、2013年を最後に新作は出ていない。彼らはパリ出身のバンドだけど「Sugar Sugar」は全曲英語で歌っていて、音楽からはフレンチ色があまり感じられない(ただ、英語の発音やメロディへの乗せ方が少し独特で、それがまた耳に残る)。「You Don’t Have To Cry」にはリバプール駅だとか「Astral Weeks」とかいったキーワードが出てくる。ブリティッシュ指向のフレンチポップなのである。


ヴァン・モリソンの「Astral Weeks」、自分はこれまであまり聴き込んでいなくて、これを機会に改めて接してみたいと思う。ストリングスが印象的に多用されているところはたしかに両アルバムの共通点。ただ自分としては、ヴァン・モリソンというより、ヴォーカルのハスキーな声質や楽曲の端正さからゾンビーズのコリン・ブランストーンを想起する。「You Don’t Have To Cry」の中盤、エイトビートからワルツに変わってストリングスとヴォーカルだけになるパートあたり、かなり「One Year」の世界。人力のバンドサウンドと生ストリングスへのこだわりが、このアルバムの音をとても心地よいものにしている。何でもかんでもデジタルで手軽に処理できてしまう21世紀に、あえてテクノロジーに頼らず手間暇かけて作られた音楽という印象。

このバンドのこと、もっとよく知りたい。2006年のファーストアルバムは日本盤も出たようだけど、「Sugar Sugar」はフランス国内のみのリリースだったらしく、本当に情報が少ない。今度はファーストアルバムも手に入れて、聴き込んでからまた改めて記事を書きたい。

Sugar Sugar 2.jpg
CDライナーにあった、ストリングスパートの録音風景らしき写真。

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