ELOとジョージと「オペラ座の怪人」

今月初めにリリースされたジェフ・リンズELOの新作「From Out Of Nowhere」、楽しんでいる。すべて3分台の曲が10曲、全体で32分というコンパクトな作品だけど中身は詰まっている。前作「Alone In The Universe」はミディアム~スローなテンポの曲が並んでいて、内面にぐっと入り込んでくる作品だったけど、今作はもっと外向的で気軽に楽しめる曲が多い気がする。中でも「One More Time」は「Roll Over Beethoven」ばりのアップテンポなロックンロール。自分はELOというバンドよりもジェフ・リン個人が大事な存在なので、ワンモアタイム、ELOをもう一度、ということよりも、間奏で流れるもの悲しいメロディーに耳を掴まれ、心を奪われてしまう。何だっけ、これ。このメロディー、どこかで聴いたことがあるのだ。しかも、ジョージが絡んでいる気がする。

1:15あたりがそのフレーズ

最初聴いたときはわからずじまいだったが、2回目で思い出すことができた。ジョージとジェフ・リンが一緒にやった、トラベリング・ウィルベリーズの「You Took My Breath Away」のエンディングに出てくる、ジョージのスライドソロだ。まさに、息をのむような美しいスライド。この曲もこのソロも、大好きなのである。

スライドソロは2:42あたり

これで一応の解決はしたのだが、まだすっきりしない。さらにこの2曲には何か共通の元ネタがあるような気がする。「Roll Over Beethoven」にベートーヴェンの「運命」が組み入れられたように、何かクラシックか、古いスタンダードか、そういう時代がかったもの。しばらく考えても自力ではお手上げなので、ネットに頼ることにした。こういう元ネタ探しで一番頼りになるのは、Youtubeのコメント欄である。公式に曲が上がっていれば、必ずファンがたくさん集まってきて、引用箇所があれば元ネタをこぞって指摘してくれる。果たして、複数のコメントで挙げられていたのがこの曲。


1986年のミュージカル「オペラ座の怪人」の主題歌。なるほど。このドラマチックな大げさ加減、いかにもELOモードのジェフ・リンが使いそう。ああ、これでようやくスッキリ解決。……ということは、「You Took My Breath Away」のジョージの美しいスライドソロも、実は「オペラ座の怪人」の引用だったのか。これは広く知られているんだろうか。自分は今まで、これが何かの引用だなんて思ったこともなかった。

引用といえば、「オペラ座の怪人」について調べたら、これは自作曲の盗作である、と主張しているミュージシャンがいることも知った。ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズである。「エコーズ」とそっくりな部分があるという(Wikipedia)。ロジャー・ウォーターズが問題にしているのは、主音から半音ずつ5つ、だだだだだーん、と下がっていき、また半音ずつ上がって主音に戻る、という印象的な展開。主音から短6度といういかにも短調な音まで一気に下がるのでドラマチック感が出るし、転調のきっかけにも使えて「おいしい」進行である。こういうのは、誰々のあの曲をいただいてやろう、と引っ張ってくるようなものではなく、そのへんに転がっているパズルのピースみたいなものである。個人的には、こういうのは「盗作」とまでは言えないと思う。これを使っている曲は、いくらでもある。ポールの「メアリーの小羊」の間奏だってそうだ。短6度まで下がり、同じ道を往復して主音に戻るところまでまったく同じ。もし「オペラ座の怪人」が盗作なら、1972年リリースのこれだって完全にピンク・フロイド(71年)の盗作になるだろう。


「片道」だけ、半音ずつ5つ下がっていく進行を使った曲なら、ほかにも例を挙げられる。ひとつは、これ。

またしても、ジョージとジェフ・リンである。この二人は「オペラ座の怪人」が大好きだったんだろうか。少なくとも、面白くいじりたくなるような曲なのだろう。「Fish On The Sand」の中間部では、だだだだだーーん、の下降が3回も繰り返され、そのたびにどんどん落ちていくコード進行が、音楽の遊びを楽しんでる感じがしてすごく面白い。上の主音から始まって最後には下の主音の半音上という変なところまで落ちてしまい、ちょっと無理矢理に最終解決するコード進行がジョージらしくて好き。

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