Eve Of Destruction

昔、都内の住宅街に住んでいたころ、近所にかなり危ない感じの家があった。住人は明らかに被害妄想に取りつかれているようで、意味不明なメッセージがびっしり書かれた大きな看板を外壁いっぱいに掲げ、アンテナをたくさん立てていた。隣近所の人々にしてみればかなりの脅威だったろう。だけど何ができよう。向こう三軒両隣の家々が、負けじともっと意味不明なメッセージを外壁にびっしり書いて、もっとたくさんのアンテナを屋根に立てれば抑止力になるだろうか。もちろん、こんなのはバカバカしい無意味なことだ。被害妄想の家はますます妄想を深め、いきり立つだろう。相手に合わせたってまったく仕方がない。核を持って核に対抗する、という考えから頭に浮かぶのはそんな滑稽な眺め。ましてや、世界唯一の被爆国である日本が。

ボタンが押されればもうどこにも逃げられないぜ
世界は絶体絶命、誰一人として助かる者はない
お前も周りを見回してみろよ、恐ろしくなるだろう
でも何度だって繰り返し繰り返し言ってほしいんだ、友よ
今が世界破滅の前夜だなんて、そんなこと信じてはいないと

本当に、嘘だと言ってくれ、と叫びたくなるようなニュースが連日続いている。核のボタンを握る権力の座にいる人間に限って頭がおかしい、という現実を現在の世界は目の当たりにしている。「Eve Of Destruction(明日なき世界)」がヒットしたのは1965年だ。今から57年前。この歌詞が今こんなにリアリティを持ってしまうのはどういうことだ。例年発表される「世界終末時計」、毎年同じようなところをウロウロしていて発表する意味ないじゃん、と揶揄する向きも多そうだけど、こういうことなのだ。核兵器が開発され、広島・長崎に落とされてから、状況は基本的に変わっていないということ。いや、原子力発電所が世界中に広がった今は、「明日なき世界」の時代よりさらにずっと危険になっている。戦争利用にしろ平和利用にしろ、原子力の利用をなくす方向に持っていかない限り、世界に明日はない。今日はウクライナの大規模原発がロシア軍の攻撃を受けて、火災が起きているという。何をやっているんだ。まさかと思うような、最悪の中でも最悪な、とんでもない展開が次々に起こる。恐ろしくて仕事も手につかず、かといって手持ちの仕事をサボるわけにもいかず、少しでも心を落ち着けようとここに文章を書いている次第である。どんなニュースを見ても、日常生活は続けなければならないのだ。でも、何度でも何度でも言ってくれよ。世界が破滅するなんて、嘘だろう。

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