Fitter, Happier

アメリカ出張に来ている。もう何回目か即座に思い出せないぐらい来ているが、9回目のようである。ここに来ると必ずなる特殊な精神状態に、今もきっちりなっている。帰国するとほとんど忘れてしまう。文章にすることはなかなか難しい。とにかく仕事始まって数日経った頃が一番きついような気がする。今日は2日目。明日あたりが最初の峠じゃないかと思う。こちらでの待遇に大きな不満はない。出張のたびに数年来ずっと一緒の仕事仲間とも、敬意を持って付き合える仲。むしろ自分にはもったいない環境すぎてそれがまたプレッシャーになっている気もする。とにかく、これはやはり自分内の問題であろう。

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この心境は行きの飛行機内から地続きのようだ(いや、地面はつながってないけど)。出張に呼ばれ始めてから5年間、往復の飛行機内で過ごした時間も合計すれば相当なもの。自分はTFCのジェリーやブライアン・ウィルソンのように飛行機旅に恐怖感はないが、太平洋を渡るだけで下界の景色が楽しめるわけでもないフライトにはウンザリしてきている。地上を遠く離れた空中の機内で過ごす時間はある意味、極限の体験。つまり、絶対に逃げられない環境で、機長に生命を全面的に預け、狭い座席に縛り付けられながら映画と音楽で退屈をしのぎ、ほしい量より微妙に少ないアルコールと、微妙に多い機内食を与えられる。機内食のメニューはAかBだけ。個々人が自由に選べることはごく限られている。航空会社の職員たちに身も心も依存せざるを得ない状況で、多めの栄養と退屈せずにすむ娯楽を提供され、自由意思による行動を著しく制限され、自分ら搭乗客はどこに連行されているのだろうか、と思わず妄想してしまう。

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機内で離陸時に聴いていた曲。50年ぶりぐらいに聴いた気がするが、いい曲だなあと思った。

提供されるビールでほろ酔い気分になりながら機内で選べるインド映画を眺めつつ、なにか自分は食肉化される運命にある鶏か豚のようだ、と思いながらひたすら座って時間をつぶす。べつに航空会社が自分を家畜並みに扱う、と文句を言いたいわけではなく、むしろ丁重すぎるぐらいだと思う。それでも頭を去来するのはレディオヘッドの「Fitter, Happier」を締めくくる「A pig, in a cage, on antibiotics」というくだり。船で海を渡ることを思えば、こんな速くて便利な移動方法があることに感謝しなければならないのだが、飛行機旅は飛行能力を持たない人類が運命に全力で逆らう究極の不自然体験である。レディオヘッドの「OK Computer」のアートワークも飛行機や空港のイメージだし、搭乗中は「Fitter, Happier」のコンピューターボイスがどうにも頭を離れなかった。

それでもジョージはそこかしこに存在する。テレビをつけても、道を歩いても。

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