空気で弾くギタリスト、ジョージ

前回記事で「ジョージは弾いていない」と結論づけてから、かえって些細なことを気にせずに落ち着いて楽しめそうなディランの「1970」である。改めて、ジョージのエア・スペシャル・ゲストぶりが味わい深い。ジョージファンをやっていると、こういうことは本当に「あるある」なのだ。このギターソロ格好いい、ナイスプレイジョージ!と思っていると、実はその曲では別の人がギターを弾いていたことが判明したりする。非常によくある。ビートルズではリードギターという立場だったが、ポールやジョンが弾いた方がいいとなればさっと引いてしまうリードギタリストがジョージなのだ。こういうことが重なると、ジョージがギターを「弾く」だけでなく「引く」ところにも注目するようになる。楽曲全体を第一に考えてギタリストとしてのエゴを抑える「引き」のセンスは演奏者として大切なことだけど、「弾かない・他人に弾かせる」ところまで引いてしまうリードギタリストは本当に希有だと思う。


「1970」の5月1日セッションでは、カール・パーキンスの「Matchbox」と「Your True Love」が取り上げられていて、こういうところには確実にジョージの存在を感じる。そのディランとトラベリング・ウィルベリーズを組む少し前の1985年に、ジョージがパーキンス御大のライブにゲスト出演して、「Your True Love」をとても嬉しそうに溌剌と演奏していたシーンが脳裏に大写しになる。「Matchbox」や「みんないい娘」のようにビートルズ時代に演奏した音は残っていないようだけど(2021年4月28日訂正:69年1月3日にゲット・バック・セッションで演奏していたことが判明)、これもジョージお気に入りの一曲だったはず。このセッション音源にジョージの歌声が入っているかどうかもあまりはっきりしないのだけど、カール・パーキンスの2曲で後ろから聞こえる声は、確かにジョージのような気がしてきた。「Your True Love」をディランと一緒に掛け合いで歌う、楽しそうなジョージがそこにいる感じがする。ビートルズ解散直後、1970年5月のニューヨークで、ディランとジョージがカール・パーキンスの曲を楽しくセッションしている場面の空気を、遠く離れた50年後の世界にいる自分が想像できるだけで嬉しいものだ。たとえギターは弾いていなくても、ディランと一緒にそこにいてくれてありがとう、と言いたくなってしまう。

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