George Harrison「Electronic Sound」

1969年5月に出たジョージのソロ2作目、「電子音楽の世界」。AB面に1曲ずつ、当時の最新鋭電子楽器だったムーグ・シンセサイザー(最近は「モーグ」表記が正しいとされているようだけど、ここでは自分が昔から馴染んでいる表記で行かせてもらう)の演奏が延々と収録されているという実験的作品。もちろん、ジョージファンを名乗る者なら、これについても一家言持っていなければモグリと言われても仕方ない。全ジ連である自分はどうなのかというと、実はつい先日までこれを聴いたことが一度もなかった。まったくのモグリである。アルバム自体が入手困難だった時代ならいざ知らず、90年代にはCDでとっくに再発されているし、今なら配信でいつでも聴ける。それでも何となく聴きそびれたまま21世紀に入り、未知のジョージ作品がまだ残っているのも夢があっていいじゃないか、と長年あえて触らずにいた。しかし、とうとう先日思い立って紙ジャケのCDを購入。CDが届いたのは、「All Things Must Pass」発売50周年記念日と、19年目の命日の中日、11月28日のことだった。この日は自分にとって、数十年越しのジョージ全作品コンプリート記念日となったのである。何をやっているのか自分でもよく分からないが、何だかめでたい。ジョージ作のカラフルな表裏ジャケのイラストを楽しみながら、初めての「電子音楽の世界」体験をした。ジョージが当時のアップルの状況を表現したという裏ジャケのイラストは、CDを手に入れて初めて見たものだった。マル・エヴァンス、ニール・アスピノール、エリック・クラプトンなどが描かれているのだという。

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実際に聴いてみた感想としては、色々なところで語られている通りの内容で、大きな驚きとか発見は特になかったけど、1曲目の「マージー壁の下で」はジョージ・ハリスン宇宙の旅といった感じで、結構いいなと思った。広がりのある空間に電子音がまばらに配された音像が、昔のSF映画に出てくるような宇宙空間のシーンを思い起こさせるのである。テーマになるメロディも曲構成も何もない分、ひたすらあてもなく宇宙空間をさまよっている感じ。1969年2月、ビートルズの「Get Back」セッション終了直後に、ビートルズのイーシャー・デモのときと同じジョージの自宅スタジオで録音されたとのこと。ビートルズの一員としての苦行から解放された直後、自宅で一人思いのままにシンセと戯れる姿は「宇宙でひとりぼっち」感があって良い。

2曲目の「超時間、超空間」は1曲目より先、68年11月にカリフォルニアでバーニー・クラウスという人物の助けを借りて録音されたという。表ジャケに緑色の肌で描かれている人物がバーニー・クラウスで、ジョージにムーグ・シンセサイザーを紹介した張本人とのこと。1曲目が幻想的な宇宙旅行なら、2曲目ではどこかの星に不時着し、いきなり激しい砂嵐に翻弄され、宇宙人にレーザー銃で攻撃を受け、と次々ピンチに見舞われるジョージである。音楽としては、やはりジョージが自宅で一人落ち着いて制作した「マージー壁の下で」の方が自分はずっと気に入った。ブログ書きのBGMにもいいかもしれない。全ジョージファン必聴の作品とはとても言えないけど、ここでジョージが電子音楽の世界を体験したことが、すぐ後にビートルズとして制作が始まった「Abbey Road」にさっそく生かされ、「Here Comes The Sun」をはじめとする数曲でのムーグ・シンセサイザー大活躍につながったことは、モグリの自分が今さら言うまでもないことである。

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ジョージ作のジャケ画をじっくり楽しむにはやはりアナログが欲しいところ

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