ジョージ・ハリスン帝国の謎

「Extra Texture」の邦題がなぜ「ジョージ・ハリスン帝国」なのか。少なくともネット上でこの謎に答えてくれる情報にはいまだにお目にかかったことがない。考え始めるとしばらく考え込んでしまうトピックで、クリスマスイブの昨晩も布団の中で寝付くまでこのことをずっと考えていた。原題の「Extra Texture (Read All About It)」は、新聞の号外を売り歩くときのかけ声「Extra! Extra!」をもじったものであることは周知である。この「号外!号外!」をもじった「極上の質感」という原題の意図も今ひとつわからないのだが、アナログ盤のジャケットにバスケットボールみたいなでこぼこした手触りの加工がしてあるのは、アルバムタイトルをさらにひねったジョージ流の駄洒落なんじゃないかと自分は思っている。つまり、「Extra Texture」は「余計な表面加工」という意味にも取れるのだ。ジャケットに要らないテクスチャーを付けてみました、みたいな。

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ジョージに「帝国」という言葉はいかにもふさわしくない。ジョージの名を冠した帝国があるのなら、もちろん帝王はジョージなのだろう。「スライドギターの帝王」「慈愛の帝王」「庭とお日様ソングの帝王」……書いててアホらしくなるほど似合わない。ジョージに似合う称号は、押し出しの強すぎる「帝王」よりは圧倒的に「第三の男」なのである。あまりにも意味不明すぎて非難の声もよく見かける邦題だが、自分は決して嫌いではない。背後の意図が読めない不思議さは、原題に共通するものがないとも言い切れない。意味を考え込んでいるうちに「帝国」という字面のバカバカしさ加減にもちょっと愛着が湧いてきてしまった。このアルバムはジョージがアップルから出した最後の作品。ビートルズ時代から続いたアップルというしがらみから独立して、これからのジョージはとうとう自らの「帝国」を築くのだ!というレコード会社担当者の妄想爆発が、もしかするとあったのかもしれない。

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OHNOTHIMAGEN = Oh not him again = おい、またあいつかよ、勘弁してくれ!

このアルバムの内容は、「二人はアイ・ラヴ・ユー」(この邦題も嫌いじゃない、単にカタカナで「ユー」よりはずっといい)を除いては限りなく地味だけど、ジョージの内面深くにぐぐっと沈み込む気持ちにさせるもので、ジョージの個人的な世界を全面的に展開したという意味では、たしかに「ジョージ・ハリスン帝国」なのかもしれない。自分はまだ、この帝国の全貌をすみずみまで理解できたとは到底言えない。帝国内部を照らす明かりが少なくて、よく目をこらして集中しないとなかなか取っかかりが掴めないのだが、耳と心を澄まして、細部まで余すところなく聴き込む価値がある作品だと思う。前に訳詞を載せた「答えは最後に」の凄さはだいぶ理解できるようになったが、ほかの曲も時間をかけてもっと深く聴き込みたい。

それにしても、いつかどこかで、発売当時この邦題を決めた担当者の方の話が読めたり聞けたりしないものだろうか。ジョージ・ハリスン帝国の謎、自分が死ぬ前にすっきり解明したい謎のひとつなのである。答えは最後に。

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