George Harrison「Mo」

ワーナー・ブラザース・レコードで長年CEOを務めたモー・オースティンが逝去。その功績を辿る(udiscovermusic.jp)

こちらの訃報記事を見て、自分の頭に真っ先に流れ出したのは、ジョージの「Mo」という曲だった。1994年にワーナー・ブラザース社の内輪向けに制作されたらしい「Mo’s Songs」という非売品ボックスセットにのみ収録され、一般には発表されていない曲である。もちろんそんなものもネットでは簡単に聴けるのである。


「50年も前のこと 小さな男の子が近所で生まれたんだ 彼の名前はモー」という歌い出しの「Mo」は、モー・オースティン氏の50歳のお誕生祝いとしてジョージが個人的にプレゼントした曲だという。モー氏は1927年生まれだから、「Mo」が作られたのは1977年頃ということになる。つまり、あの名作「33 1/3」(1976年)と名作中の大名作「George Harrison(慈愛の輝き)」(1979年)に挟まれた、最高の時期のジョージである。「Mo」は、簡素なデモではなくフルバンドできっちりと手間ひま掛けてレコーディングされていて、そのまま普通にリリースしてよさそうな完成度の高い曲。楽曲自体のクオリティとしてはやはり非売品だけあって100%の出来とは言えず、トレードマークのディミニッシュコードとスライドギターを合わせてガラガラポン、という自己パロディ的なものも感じるけど、この時期のジョージはさすが何をやっても慈愛のオーラがまぶしい。ジョージスライドもたっぷり聴ける。歌詞を書き換えて、もう少しアレンジを加えれば、この時期のジョージのアルバムに収録されていても決して遜色なかっただろう。ジョージはどうして、こんな豪華すぎる誕生日プレゼントをレコード会社の社長に贈ったんだろうか。

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訃報記事にジョージの名前は載っていなかったけど、もちろんジョージは長年ワーナーとは大いに関係があった。ジョージが自ら設立したダーク・ホース・レーベルと、全世界での配給を行うワーナー・ブラザースの長年にわたるパートナー関係が始まったのが1976年のこと。設立当初の74年から76年まで組んでいたA&Mレコードとは関係が悪化、決裂ののちにワーナーに移籍したという経緯があって、モー氏に対しては恩義があったのだろう。前のようなゴタゴタはもううんざりだから、新しいパートナーに対して、これからも末永くよろしくね、という心づくしのプレゼントをしたのかもしれない。ワーナーに移って心機一転で作り上げた「33 1/3」の出来も上々だったし、ようやっと安心して落ち着ける先を見つけた、これからやったるで、という前向きな喜びが「Mo」を聴いていると感じられる。それにしては、次作「慈愛の輝き」まで2年以上のブランクが空いたのがまた不思議なのだけど。さらにその次の「Somewhere in England」は、いったん完成して提出したものがワーナーに突き返され、収録曲とジャケットの差し替えという煮え湯を飲まされている。「Mo」と共通する優しい雰囲気を持つ佳曲ばかりが却下されたのだ。その差し替えを命じたワーナー経営陣のトップが当のモー氏だったのだから、ジョージもそのときはさすがに、あのとき贈った曲返してくれ、と思ったんじゃないだろうか。

ワーナーに対する不満をぶつけた曲だが、怒りモードの尖ったジョージはいつも格好いい

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