ジョージのイーシャー・デモ版「Sour Milk Sea」

ホワイトアルバム50周年盤で公式に発表されたビートルズのイーシャー・デモ。イーシャー(Esher)は当時のジョージ宅があった地名で、邸宅の名前はKinfauns。この邸宅のペインティングを楽しむジョージとパティの写真が載った写真集を持っている。

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ジョージ、ほんとに楽しそう。ガーデニング同様、DIYも大好きだったんだろうな。外壁いっぱいに広がるサイケなペイントはシーモン&マーレイケによるもの。

イーシャー・デモはそのKinfaunsの名前を冠したブート盤などでずっと前から聴くことはできたが、やっぱりデモだね、という音質でしかなかった。しかしそれは非公式のブートだったからで、「Anthology 3」で公式に発表された数曲を聴いたときは音質の良さにぶっ飛んだものだった。ジョージ、自宅にちゃんとプロ仕様の4トラックレコーダーを備えていたのだ。イーシャー・デモ全27曲中、そのジョージの曲はわずか5曲、しかも最終的にホワイトアルバムに入ったのは2曲だけ。それでもバンドのために自宅と機材を気前よく提供したジョージ。ホワイトアルバムの時期にはバンドはすでにバラバラ、レコーディングの雰囲気は最悪、というのが定説だったけど、イーシャー・デモでのビートルズがいい感じにリラックスしたムードで聴いていて楽しいのは、直前のインド瞑想旅行で思う存分やりたいことができて、大きな手応えをつかんだであろうジョージの満足感がKinfaunsに溢れていて、バンドを気持ちよく迎え入れたのだろう、きっと。全ジ連的にはそんな風に想像するのである。

ジョージの5曲のうち、ジャッキー・ロマックスに提供した「Sour Milk Sea」は一番不遇の曲だと思う。ジョージのプロデュースで、ポール、リンゴ、エリック・クラプトン、ニッキー・ホプキンスをバックに従えてレコーディング。これは船頭が多すぎて船が山に登ってしまった典型例という感じでジョージらしさはかなり薄まっている。


しかし、ジョージ自身が録音したイーシャー・デモ版は最高に格好いいのである。終始ファルセット気味のヴォーカルがクールだし、EとF#のキーを行ったり来たりする変なコード進行が非常にジョージらしい。とくにサビ終わりのE→D→C→F#7→Am。CからF#7はかなり無理矢理な進行だけど、ここのねじれ感が一番いい。そして、そのあとのAm。ソロになってからのジョージのトレードマークと自分が勝手に思っている4度マイナーの進行で、出た!という感じ。すごくジョージ。このコード進行の妙が本人の演奏だとよく分かる。そんなわけでイーシャー・デモ全27曲中、自分が一番楽しんだのがこの曲。公式に出てよかったよ。

ブートで聴けたバージョンはエレキギターとベースとスネアドラムっぽい音が入っていたが、公式に出たものはジョージの歌とギターと軽いリズムだけ。ギターのチューニングも公式版では一音低い(先に書いたコード進行のEがDになる)。演奏のテイク自体が違うようだ。ロック的に格好いいのはブート版のほうだけど、なぜ公式版では別のテイクが選ばれたのか。もしかするとブート版のギターやベースはビートルズの演奏じゃなくて誰かが勝手に重ねたものだったのかも。単なる推測だけど。

自宅にプロ用の録音機材を揃えていたジョージ、色々と宅録してたんだろうなあ。どんなものが残っているのか。いつか聴くことができる日を夢見て長生きしよう。

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