ホフディランとジョージ

ボブではない、ホフである(いちおう念のため)。彼らが「スマイル」でデビューした頃、自分は日本のロックを一番よく聴いていた時期で、ホフディランにも何かピンと来るものがあって、渋谷に当時あったHMVだったかにインストアライブを観に行ったりしたのを覚えている。1stアルバムの「多摩川レコード」もだいぶよく聴いた。しかし気持ちが移ろうのも早く、次作の「Washington, C.D.」以降は今まで聴かずじまい。ただ、当時ヒットしてラジオでかかっていたビートリーな「恋はいつも幻のように」は、とてもいい曲だったのでかろうじて記憶に残っていた。


この曲にジョージが隠れていたことを先日教えていただいた。いや、イントロや間奏のスライドギターは明らかにジョージである。それは言わずもがななのだが、もっと普通なら気づかないようなところに隠れジョージがいたのだ。1番のサビが終わってスライドギターが入り、2番のAメロに入ったところのバックコーラス。「I got my mind set on you」と繰り返し歌っているのだ。言われてみれば確かに!だけど、気づかなければ何度聴いても一生気づかずに終わりそうな、さりげなさすぎる引用。ジョージの偉大なる発明、スライドギターのディミニッシュ下降ハモりは本当にたくさんの曲で便利に引用されてきたけど、もしかするとホフディランの二人は、ジョージを曲の盛り上げ道具として使うだけでは気が済まなかったんじゃないだろうか。セット・オン・ユーという選曲といい、こっそり忍ばせるやり方といい、とても素敵なオマージュだと思った。セット・オン・ユーに関しては、これも教えてもらったことだけど、2017年の「帰ってきたホフディラン」収録の「珈琲」でも「恋はいつも幻のように」よりはずっと分かりやすく引用されている。さらに、彼らが参加したジョージへのトリビュート盤「Gentle Guitar Dreams」(2002年)では、曲自体をカバーしている(本作はCDを持っておらず、配信にも見当たらないので、残念ながら未聴)。2度にわたる引用にカバーまでして、セット・オン・ユーに対する並々ならぬ思い入れを感じる。「珈琲」では「Here Comes The Sun」っぽいフレーズのギターも聴けて、もうジョージへの愛しか感じないホフディランなのである。こんなことだったとは、自分はほんとに何も知らないと、つくづく。


ホフディランとジョージといえば、自分も覚えていたことがあった。90年代、東京郊外に住んでいた頃に車のラジオでよく聴いていたJ-WAVEで、ある番組にホフディランの二人が出てきて、ビートルズの「Sexy Sadie」をリクエストした。そのとき、エンディングのフェードアウトのところで、ジョージのギターフレーズに合わせて二人でハミングを始めて、「ここがいいんですよ」とコメントしていたのだ。そう、そこがいいんだよ!と、ハンドルを握りながら聴いていた自分はとても嬉しかった。ホワイトアルバムの中では地味な方の曲で、ジョージのギターの良いところをあんな風に取り上げてくれて、彼らはビートルズが、ジョージが好きなんだなあ、と印象に残っていたのだ。これについても、「多摩川レコード」を聴き直してみたら、そのラジオで褒めていた「Sexy Sadie」のジョージのギターをはっきり引用した曲があった(MILK)。これまた今まで気づいてなかった。自分は90年代当時、かなり漫然と彼らの作品を聴いていたらしい。今改めて「多摩川レコード」を聴いてみると、本当にいい曲が多くて、ワタナベイビーは思っていた以上にハードフォーク時代の清志郎度が高いし、凄い二人が出会ったものだ、と今さら思った。


パクリかオマージュか、引用か盗用か、というのはいつでも論争の種になる。自分としては、引用元への愛が感じられて(これも主観的なものだけど)自分が楽しく聴ければオーケーなので、この辺の論争に深入りはしない。ホフディランがやってる引用は、楽しいものばかり。以下は、彼らの元ネタをまとめたブログ記事。やはり、ビートルズ関連が多い。

ホフディランのオマージュ 元ネタを集めてみました。

こうなると俄然、自分でも何か見つけてみたくなって、元ネタ探しモードで「恋はいつも幻のように」あたりの時期の作品を聴いてみた。今のところ気づいた限りでは、「GOOD!」(Washington, C.D.)はジェリーフィッシュ「Baby’s Coming Back」とビートルズ「Revolution 1」。「コジコジ銀座」(JAILHOUSE HITS)は、イントロのドラムの入り方や全体の雰囲気がビートルズ「Rain」っぽい。さらに、「遠距離恋愛は続く」(JAILHOUSE HITS)のメロディ、これも絶対にどこかで聴いたことがある!と思いながら、すぐには分からず、しばらく脳内検索をして、とりあえずたどり着いたのがこの曲。


イントロのキーボードのフレーズが、「遠距離恋愛は続く」の歌い出しのメロディとかなり似てると思うけど、どうだろう……いずれにしても、「Reminiscing」は大好きな曲だし、「遠距離恋愛は続く」も必殺ポップ。2ndの「Washington, C.D.」も凄いアルバムじゃないか。聴けば聴くほど色々発見がありそうな音楽。ホフディラン、いい曲が多いなあ。知っていたつもりのアーティストでも、こうやって20年以上経って再び接してみると実は全然知らなかったり、何千回と聴いてきた曲でもある日突然、知らなかった一面がぱっと目の前に現れたり。そのたびに、はっと衝撃を受ける。こんな風に音楽は一生楽しむことができる。


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