インド日記2010年8月:水が出ない暮らしは大変すぎる

2019年9月9日に千葉県に上陸した台風15号。自分はその前日に成田空港から何事もなく帰宅したが、自分との縁が浅からぬ千葉では台風襲来から4日経った今日も、電気、水、通信という生活に欠かせないインフラが復旧していない世帯がたくさんある。台風でめちゃくちゃになったインフラが一刻も早く復旧しますように。インフラだけでなく、大事なものを台風に破壊され、心折れてしまった方もいると聞いて胸が痛む。普段の生活を壊され、打ちのめされた方々が、どうか立ち直って前に進めますように。自分がインド生活をしていた頃、大商業都市ムンバイはインドの中ではまだインフラに恵まれていた方だった。それでも、こういう事態を目にすると思い出すのはインド生活のこと。9年前の2010年8月、こんな文章を書いていた。前に載せたインド日記の続きで、解消したと思った水不足問題がさらに凶悪化して襲ってきたときのこと。

先月書いた水問題、もう二度と起こらないでほしい出来事だったが、さらにグレードアップしてまたまた発生である。

便利な日本でこれを読んでくださっている方々には分かりづらい話だと思うので、ムンバイの水道事情、実際どうなっているのかというと――日本では1日24時間、公共の水道から給水されるのが当たり前だが、こちらでは公共の水道から水が来るのは朝の2時間だけ。それ以外の時間にも水が使えるように、各家庭には貯水システムがある。我が家では風呂場の頭上に大きな貯水タンクがあり、そこに一日分の水が朝の給水時間に自動的に貯まるようになっている。このタンクから蛇口やトイレに一日じゅう水が供給される仕組みである。朝の給水が足りないと、その日一日は水不足ということになる。貯水タンクの水だけでは心許ないので、バケツ数個にも毎朝水を貯めて、水浴びや掃除に使っている。通常はこれで日常生活を回していける。

ここ一週間ほど、その風呂場上のタンクに水がめっきり貯まらなくなった。蛇口からの水は貴重品となり、なるべくバケツの水で用を済ませなければならない。量が限られているので、洗い物や掃除に思うように水が使えずとても不衛生。そして意外と水をたくさん使うのがトイレ。貴重な水のストックが減ることを考えると、できればトイレに行かずに我慢したいのだが、さすがにそういうわけにもいかない。手を洗ったり頭を洗ったりした水を再利用してやりくりしているのだが、濁った水でトイレを流すのはあんまり気分が良くない。雨はたくさん降っているので、思いついたのはこの天からの給水を利用すること。バケツにひもを付けて窓からぶら下げ、下の階のひさしの上に置いてみた。まとまって降るときれいな水が結構貯まる。しめしめ。これぞ、最近話題のレイン・ハーベスティングというやつである。

今年の雨期の降水量はもう十分で、ムンバイに水自体は潤沢にあるようなのだが、我々の住むコロニー限定で何か問題が起きているらしいのだ。犬と暮らすぐうたらおじさんのいる管理組合の掘っ立て小屋にまた苦情を言いに行ったりもしたが、「原因は我々にも分からない」「当局と話はしているが、いつ解決するかは何とも言えない」と絶望的な答えが返ってくるばかり。お隣さんと顔を合わせればまず「今朝も水が来ませんね…」と嘆き合う毎日。我が家と同様に水不足なのに、お隣さんには水をバケツ一杯分けていただいたりして助けてもらっている。いいお隣さんで本当に良かった。

水不足生活では、毎朝の給水時間が勝負だ。その日使う水をバケツに溜めつつ、食器洗いや洗濯などの水仕事も水が来ている間に済ませなければならない。作業がひととおり終わった後、問題の貯水タンクに給水されているかどうか、息をひそめながら耳を澄ます。もう前に書いたような「POLY GOLD」の高さにまで水が来ないので、タンクを目で見ても給水量を確認できないのだ。チョロチョロとかジャボジャボとか水の音が聞こえていれば良いのだが、給水の水圧が足りないために、上のタンクにまでなかなか水が行かない。しーんとしたまま給水時間が終わってしまうと、ガックリ力が抜けてしまう。

給水不足とは逆に、大雨のためにちょっとした水害まで起きている。


天井から水がしみ出して水滴が壁を伝う、つまり雨漏り


住んでいる棟の入り口には大穴が空いた。危険!

バケツ生活も一週間を過ぎ、不便ながらも日々やりくりして暮らしていたが、先週末には事態がさらに悪化、とうとう家を脱出する羽目になった。

後記:本当に水がすっからかんになってしまった週末、ホテル泊を余儀なくされた。富裕層が住む地域にある庭園風のゆったりできる公園、その名もニルヴァーナ・パークで休みながら、こんなしょぼい水問題とは無縁であろう、公園隣の高級マンションを見上げたときのせつない気持ちは今でもよく覚えている。
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