インド日記2011年9月:インドの滝には車ごと打たれる

日本では「暑さ寒さも彼岸まで」と言うが、ムンバイの人々は「雨はガナパティ祭りまで」と、象の神様ガナパティ(ガネーシャ)のお祭りが雨期の終わる区切りと考えていた。例年、ムンバイでガナパティ祭りが行われるのは9月頃。今年のムンバイも、今は10日間のガナパティ祭りの真っ最中である。平常時なら、終盤には大通りに巨大なガナパティ神輿が出て群衆が繰り出し、大いに盛り上がるお祭りだけど、去年から続くコロナ禍の中、今年もきっとムンバイ人は「おうちでガナパティ」を楽しんでいることだろう。お祭りと雨期が終わった10月には「セカンド・サマー」「オクトーバー・ヒート」と呼ばれる年に2回目の暑い季節がやってくる。「暑さ寒さも彼岸まで」の日本とはまったく違う気候なのである。

そんな雨期の終わりが近い10年前の9月に書いた、レンタカーでドライブに行ったときの日記を載せる。行き先はムンバイ近郊にある滝の名所で、道路にまで滝が流れ落ちていて車ごと上から水に打たれるという、想像以上の体験だった。車がぬかるみにはまって動けなくなり、通りすがりの村人たちが一生懸命手伝ってくれて脱出できた場面もあって、そんなこともあったなあ、と今読み返すと懐かしい。ほんとにインド生活ではあらゆる場面で見知らぬ人々に無償で助けてもらって、その恩返しは全然できないままだ。

週末ドライブのたびにレンタカーを借りるのはあまりにも面倒だったので、この日記から2カ月ぐらい後にはインド国産のタタ・インディカという車を中古で購入。日常的にムンバイ市内~近郊をさんざん走り回った末、インド生活の締めくくりに6週間かけて南インド各地をドライブして、インディカとはお別れした。今はわからないけど、当時のインドにオートマの車はほとんどなく、インディカも当然のごとくマニュアルだった。帰国後は、オートマのハイブリッド車を運転している。インドから帰って今年の10月で7年になる。ときどき、当時の日常に戻ってマニュアル車をまた乗り回してみたいと思うけど、時代は変わった。

日曜日のムンバイは、ショッピングモールに繰り出す以外に子連れで楽しめるようなところがほとんどない。たまにはレンタカーを借りて近郊に出かけるムンバイ脱出イベントが必要だ。今回はムンバイから約150km、車で4時間のところにあるマルシェージ・ガートに向かった。手元のガイド本によれば雨期には至る所に滝が流れて圧巻とのことで、前々から行きたいと思っていたスポットだった。雨期に入る少し前に一度行こうとしたのだが、出発が遅れた上に途中のカリヤーンという街を抜けるのに手間取り、途中で時間切れになってしまった。今回は早く出発し、カリヤーン市街をバイパスする行き方も確認した。おかげで昼過ぎには目的地に着くことができた。

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雨期の草に埋もれるナショナル・ハイウェイ222号の表示板

カリヤーンを抜け、ナショナル・ハイウェイ222号を東にどんどん進んでいくと、景色は徐々に田舎らしくなり、田んぼや川が姿を現した。どうしてこんな形に、と不思議になってしまうような凹凸の激しい山がそびえ立つ。どんどん走っていくと前方に壁のような山がどんどん近づいてくる。けっこうな迫力だ。

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緑の山は雨期ならでは。地層の線がくっきり見える

山道に入ると道ばたに何本も滝が流れている。これが見たかった。来て良かった。けっこう肌寒いのに着衣のまま滝に打たれる若者やおじさんもたくさんいる。氷の入ったドリンク飲んだだけで風邪引くインド人、そんなことしたら結果は目に見えているように思えるが、血が騒ぐのは止められないんだろう。

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山道を登っていくと滝の数も増え、雰囲気が盛り上がってきた。やがて、前方に道をふさぐ群衆が見えてきた。そして大音響のボリウッドソング。何やってるんだ……?! なんと、滝が道路に直接注いでいて、その滝に打たれながら若者が映画の真似してレインダンスをやっているのだ。ここまでのことは予想していなかった。すごいなマルシェージ・ガート。当然、車も滝に打たれなければ通れない。こんなドライブは初めて。

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マルシェージ・ガート近くの道

さて昼食をここで取るつもりで来たのだが、適当なリゾートが見つからない。有名な観光スポットなので気の利いたリゾートの一つぐらいあるだろうと思い、あまり調べずに来てしまったのだが、マハーラシュトラ州公営のリゾートしか見あたらない。これは見るからにみすぼらしくて入る気にならない。これほどの名所ならきっと何かあるはず、と先に進む。滝の次はとてもきれいな湖が見えてきた。いいところだなあ。しかし見つかったリゾートはもう1つだけ、これもあまり行きたくない感じ。仕方なく入ったが、ぼろくて消毒臭いしトイレもドアが閉まらない、とてもオススメリゾートとは言えない代物だった。それでも店内には店主らしき人物と若手人気女優さんが写っている写真が飾ってあり(景色がいいのでボリウッド映画の撮影がよく行われるらしい)、そんな人が来るぐらいならほんとにここしかないんだな、とあきらめた。

昼食後、その綺麗な湖のそばを走る車が見えたので、自分もそっちに車で行ってみたくなり、それらしき道に入ってみたらそれは村に入る道で、先は未舗装のぬかるみ、これはだめだとUターンを試みた。ところがタイヤが空回りしてにっちもさっちもいかなくなった。困った。後ろから来た村人の車に助けを求めた。車を押したり引いたり持ち上げたり、4~5人の村人が一生懸命やってくれたおかげで、車の下に引っ掛かっていた大きな石がとれ、何とか脱出成功。皆に握手を求めたが、村人の1人は「いや、手が汚れてるから」と言った。泥はねも厭わずに見ず知らずの我々のために手を貸してくれたのだ。インドの通りすがりの人々にはほんとにいつもお世話になりっぱなしだ。

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湖のほとりには田んぼが広がっていた

帰り道は行きと全然違う天気になり、視界のほとんどない濃霧。行きに見えた山がまったく見えず。運転は怖かったがこれはこれで美しい光景だった。息子が「なんにも、見えなくなっちったー」という調子のいいフレーズを編み出して何度も繰り返し唱えてくれた。乗り物好きの息子は日頃から「レンタカー借りる?」「レンタカー借りようねー」とドライブを強力にリクエストしていた。今回のドライブにも満足したようだが、その後も折に触れてレンタカーの話を持ち出してくるので、そのうちまたどこかに行くことになるだろう。

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