It's Johnny's Birthday(「She Said She Said」の謎)

明日はジョンが生きていれば80歳の誕生日ということで、ジョージ公式のSpotifyアカウントでは「It’s Johnny’s Birthday」というプレイリストを公開している。ジョンのソロでジョージが参加した曲、ジョージの曲でジョンに言及しているもの、ビートルズ曲の中でジョンとジョージの二人にスポットが当たったものが選曲されているようだ。

「It’s Johnny’s Birthday」については、当ブログでだいぶ前に書いた「Apple Jam」についての記事で触れたように、クリフ・リチャードの曲の替え歌だったことを自分が知ったのはかなり最近になってからだった。続いて、ビートルズ時代にジョンとデュオで歌った唯一の曲「You Really Got A Hold On Me」が入っているのが嬉しいし、ジョージの曲にジョンがスチールギターで大いに貢献した「For You Blue」が入っているのもいい。ジョンのソロ曲にジョージがギターで参加した演奏は、今さら言うまでもなく最高の名演がたくさん。最後はやはり追悼曲の「All Those Years Ago」で締めている。一方、ひねった選曲もあって、「She Said She Said」と「Living In The Material World」が入っている。この2曲が自分にはあまりピンと来なくて、どうしてかな、と少し調べた。「Living In The Material World」についてはすぐに解決。歌詞にジョンの名前が入っていた。

Met them all here in the material world
John and Paul here in the material world
Though we started out quite poor
We got Richie on a tour
Got caught up in the material world

この物質世界でたくさんの人たちに出会った
ジョンとポールに出会ったのもこの物質世界
バンドを始めたときはずいぶん貧乏だったけど
「リッチー」が加わったツアーでリッチになった
おかげですっかり物質世界にがんじがらめ

この曲でジョンと言われてこの一節が思い浮かばなかった自分は、今まで歌詞をろくに読んでなかったんだなと反省した。「We got Richie on a tour」は、リンゴの本名リチャードの愛称「リッチー」と、リンゴ参加後のビートルズが間もなく大金を稼いでリッチになったことをかけたナイス駄洒落であることは、説明するだけ野暮だが説明してしまった。

「She Said She Said」については、まずポール不参加説のことを考えてしまう。1966年8月5日発売の「リボルバー」の中で、一番最後の6月21日に夜を徹してレコーディングされた曲だが、セッション中にポールがほかのメンバーと対立してスタジオを出て行ってしまい、ジョージがベースを担当して3人でレコーディングを済ませた、という話である。Wikipediaを見ると、日英どちらの版でも完全にポール不参加を前提として書かれているが、これも例によって諸説ある。「The Complete Recording Sessions」では、口論やポール不参加についてはこの日の項で一言も触れられておらず、リズムトラックの構成はいつもの「ドラム、ベース、ギター2本」と書かれている。自分もどちらかというと、ポールは普通に参加したんじゃないかと思っている。音楽を聴く限り、ベースラインはシンプルなように見えて、歌い出しの「She said…」の後、小節2拍目の裏に16分音符がパッと入るところはとてもポール的で、そこは毎回きっちり正確なタイミングで演奏されているのだ。66年当時のジョージが、専門外だったベースを急に担当することになって、そんな細かいところをここまできちんと弾けたかな、と思うのである。それに、当時のポールが、いくらムカついたからといって、発売日が迫っていたアルバム制作の最終盤に現場を放り出すなんて無責任な振る舞いをしたというのも、何だかどうしても腑に落ちない。「Recording Sessions」によれば、この「リボルバー」大詰めのレコーディングはリハーサルから本番まで9時間弱もかけて一気に進められ、明け方の3時45分まで続いたのである。ポール本人は90年代に「自分は演奏してない。ベースはジョージが弾いたんじゃないかな」と言ったらしいが、何十年も経った後の回想だし……ポール不参加説に関しては、自分にとっては今も謎のまま。(2022年11月後記:謎は解けました

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ポールの参加/不参加はともかく、この曲のテーマになったLSD体験に当時積極的だったのがジョンとジョージで、まだ遠慮していたポールは蚊帳の外だったという状況の中、この曲ではポールの存在感が薄いのは確か。フェードアウトでジョンと掛け合いで歌っているのは明らかにジョージだし、ジョンのヴォーカルに絡む上のパートのコーラスもジョンとジョージの二人で歌っているようで、とてもクール。「アンソロジー」の本にジョージの発言として、ジョンと二人で「She Said She Said」の作曲を仕上げたときの様子が語られている。ジョンの作りかけていた数曲の断片をつなぎ合わせる手伝いをして、「No no no, you’re wrong」というフレーズを出したのもジョージだったという。実質上はレノン=マッカートニーというよりレノン=ハリスンの共作だったといえる。「She Said She Said」は、同じ「体験」をしたジョンとジョージの二人が中心になって作り上げた曲だというのは、本当らしい。これがジョンの生誕80周年を祝うジョージ公式のプレイリストに入っているというのは、ちょっとパンチが効いている。

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