Leaves of October ~ Andrea Perryについて、つらつらと

アナログ盤が好き。最近よく買うのはCDよりもガラクタみたいな激安中古レコード(宝物)ばかり。でもアナログ至上主義では決してない。MP3などの圧縮オーディオが登場したときは大衝撃を受けた。音楽との付き合い方が以前とはガラリと変わった。持っているCDを片っ端からPCにぶち込んでシャッフルして、毎日の作業BGMとして長年にわたって聴いているし、最近はSpotifyで音楽配信も楽しんでいる。Spotifyを始めてから未知の音楽を聴く機会が格段に増えて、新しめの音楽も身近になってとても良かったと思っている。自分の好きな曲を集めたプレイリストを公開しているミュージシャンもいて、信頼できる人のプレイリストがとてもいい情報源になったりしている。そんな中で出会って、今年たぶん一番よく聴いた、脳内再生率もダントツのアーティストがAndrea Perry。10月中に何らかの形でこのひとのことを書きたかった。

アルバムを4枚出していてどれも素晴らしいんだけど、中でも2002年に出たセカンドの「Two」は抜きん出て特別な作品。Spotifyで全編聴けるし、BandcampでMP3音源も買ったが、手元に置いておきたくてCDまで買ってしまった。作詞作曲はもちろん、ドラム以外の全パートをひとりでこなすマルチプレイヤー。両親はピアニストの音楽教授とクラシック作曲家、家のレコード棚にあったポップ音楽はビートルズだけだったという。そのビートルズに多大な影響を受けたことは聴けばすぐわかる。ビートルズ影響下のひとり録音マルチプレイヤーといえば、エミット・ローズ、トッド・ラングレン、中村一義、初期のレニー・クラヴィッツもそうだな……女性でそういうアーティストはどれぐらいいるんだろう。テキサス州オースティンで活動するAndrea Perryも自分内ではその系譜、2000年代アメリカ女性インディー版。この記事の参考にいま読んだ彼女のインタビューでは、一番好きなソングライターはエリオット・スミスだって。初めて知ったけど、やっぱり。こうやって好きなものはどんどんつながっていく。

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「Two」の頭2曲、「Bursting Through the Clouds」「Oh No! The Day is Dawning」は聴いた瞬間にノックアウトのキラーチューン、次の「Time to Say Hello」も聴けば聴くほど毒が回って抜け出せなくなるし、その後の曲も軒並み中毒性。ラスト2曲がまた素晴らしくて「Gettin’ to Know You」はいま一番好きな曲。「Across the Water」はシンプルだけどスケールの大きなピアノバラード。自分内では名曲ピアノバラードとして歴史に名高いあの曲やあの曲(何でも思い浮かぶ曲を入れてください)と肩を並べるレベル。ピアノから音楽を始めたようなので、基本的にピアニストなんだろうけど、ギターも独特の個性があって好き。テクニカルではないけど自分の音を持っていて、フレーズひとつひとつに意味がある。ファーストの最後に入っている「I Rued The Day」のギターはこのひとには珍しくフリーキーに爆裂していて、壮絶。いちばん最近覚えた楽器というベースもすごく巧み。ヴォーカルは過剰な感情を乗せずに淡々と正確にメロディを表現する、これも自分の好きなタイプの歌い方。歌の内容はどれも個人的なもの。初期作品にはマイルドな毒気があるけど、アルバムを重ねるごとに徐々に孤独感、絶望感が濃くなり、透明になっていく感じがする。でも聴いていて気持ちが落ち込むようなものではない。偉大なる音楽の力。全体にメロディとアレンジがとても良くて、心地よい上質ポップだけど、彼女にしかない個性がどの作品にもびしっと一貫している。ファーストが2000年、最新作が出たのが2013年。ほかにKaliyoという2人組、Pop4という4人組ユニットに参加したり、ジングル、CM、ゲーム音楽など色々な作曲仕事をしたりしているようだ。でも彼女が自作を歌うソロアルバムがやはり断然、魂に刺さる。5枚目は作ってるんだろうか。

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「Two」がこの世に送り出された2002年から、自分がこのアルバムに出会った2018年、16年間も自分はいったい何をやってたんだろう、と思うほど共鳴してしまった音楽。だからこそ言葉で音楽の良さを伝える難しさを感じる。自分なんかの言葉の力でだれかに影響を与えられるとは思えない。自分も他人の言葉に感化されて音楽を聴くことはほとんどない。何かの拍子に耳に入ってきたものにピーンと共鳴して、そこから自発的に掘ってのめり込むというのがほとんど。これは絶対良いからみんな聴け、必聴、というスタンスでは自分には書けない。音楽に対する感性はまったく個々人の持ち物、他人には不可侵の領域だと思っている。せいぜいできるのは、同じ音楽に惹かれる人との答え合わせ。だからこの文章も、同じようにAndrea Perryの音楽を何かの機会に聴いて気になった人が、アーティスト名を検索してこの文章が引っかかってきて読んでくれるといいなと思う。

Andrea Perryの音楽で最初に自分の耳をとらえた出会いの曲が「Leaves of October」。これはサードの「Rivers of Stars」に入っている。何だかこの作品はアコースティックでメランコリーな曲が多くて、全体に秋っぽい印象がある。10月になって盛んに落ち葉が舞い始めたものだから、この曲が頻繁に脳内再生されてきて、それで今月中にこの記事を書くことにした。


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