訳詞:Crosby, Stills, Nash and Young「Teach Your Children」

夏休み中の息子と朝の散歩をしていたら市の防災放送が流れてきて、黙祷の呼びかけがあったのでしばらく立ち止まり、息子と一緒に目をつぶり祈った。今日は2020年8月6日、広島への原爆投下から75年。自分は広島を訪れたことが一度もなく、もちろん息子もなので、今年は原爆の記憶をとどめる場所を実際にこの目で見ようと正月頃には思っていたのだが、広島どころか県外にも出られない現状。今年の世界は、核戦争とは種類の違う、未知の感染症という予想だにしなかった災厄にかかりきりである。しかしこれも、個人レベルを超えて、有無を言わさず世界中を巻き込む大きな流れという点では、戦争と似ている気がする。自分はこの流れの中で正気を失わずにいつまでも真っ直ぐ立っていられるのだろうか。もし、非常時だから、と周りの世界が一人残らず間違った道を突き進んでも、自分は正しいと信じる道を見失わずにいられるだろうか、と黙祷の後もぐるぐる考えながら歩いていた。

歩きながら、CSN&Yの「Teach Your Children」のことも思い出した。歌詞をよく読むと、戦争と平和のことに直接言及している内容ではない。親子の避けがたい断絶と、それをいかにして乗り越えるか。理詰めで話し合って食い違いを「解決」するのではなく、互いに夢を与え合って、言葉では表せない愛情を感じながら、互いの立場を思いやって緩やかにつながっていこう、と優しく諭すような歌。グラハム・ナッシュがこの曲を書くインスピレーションになったという、ダイアン・アーバスという写真家が1962年に撮影した写真、さっき初めて見た。(もっと大きい写真はこちら

Childwithhandgrenadedianearbus.jpg
By Photographer: Diane Arbus, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=11865113

平和そのものという感じの公園の木漏れ日の中、男の子がおもちゃの手榴弾を握りしめて、緊張した姿勢で立っている。まるでパンクバンドのメンバーみたいに、目を見開いて痙攣したようなこわばった表情。ナッシュはこの写真を見て、子供の世代に向けて何か書きたいと思ったらしい。この男の子は、本人が大人になってからの回想によれば、実際に親の離婚で孤独感や見捨てられた気持ちを抱え、爆発寸前だったという。写真に撮られた表情は、当時お気に入りの戦争映画で見たものを真似したのだろうと回想している。この曲が世に出て、今年でちょうど50年。人間世界の分断と断絶はますます深まるばかり。行きつく先は、やはり核戦争なのだろうか。


2018年の8月に公開されていた「Teach Your Children」の公式ミュージックビデオを見ると、2年前に作られたものなのに、まさに2020年の内容になっていて驚いてしまう。世代、人種、国籍、性別、世界中のあらゆる断絶に傷ついた心に優しく歌いかけたこの曲にナッシュが込めた思いは、1970年、2018年、2020年、どの時代だろうと有効ということなんだろう。特にここ最近は、このへんの1970年あたりに出た名曲群が、自分の心にすとんと落ちてくるようになってきた。親世代のものと思っていた、ちょっと煙たかったメッセージが、一周して自分にとっての真実味を強く帯びるようになってきたのだろうか。今の世界の状況も70年当時と似ているのかも、と思わずにはいられない。ならば自分もいくら煙たがられようと、子供の世代にメッセージを引き継いでいかなければ。夢は世界平和。戦争をしてはならない。核戦争は今後も未来永劫、絶対にごめんだ。

この曲の訳詞はネットにたくさんあるから、別にあえて自分がやらなくてもいいよな、と思いつつ、歌詞の内容を詳しく知ろうとしているうちに全編訳してしまったので、最後に載せる。

人生の道を歩み続けているあなたには
生きる規範というものがきっとあるでしょう
だからしっかり自分自身でいてください
過去なんて「さよなら」ひとつで言い表せてしまうから

子供たちによく教えてあげてください
お父さんは時間をかけて 困難な人生をくぐり抜けてきたのだと
子供たちにはたくさん夢を与えてください
どの夢が選ばれたのか やがて知ることになるでしょう

なぜそれを選んだのかは決して尋ねないことです
その理由を聞いたら あなたは泣いてしまうでしょう
だから子供たちを見やって ただため息をつけばいいんです
子供たちはあなたを愛しているんですから

そして君たち まだ若い君たちは
大人たちが味わってきた恐怖のことはわからなくて当然
だからその若さで大人たちを助けてあげてください
一生を終えるそのときまで 大人は真実を求め続けているのです

親たちによく教えてあげてください
子供たちはこれから時間をかけて 困難な人生を経験していくのだと
親たちにはたくさん夢を見させてあげてください
どの夢が選ばれたのか やがて知ることになるでしょう

なぜそれを選んだのかは決して尋ねないことです
その理由を聞いたら あなたは泣いてしまうでしょう
だから親たちを見やって ただため息をつけばいいんです
親たちはあなたを愛しているんですから

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