訳詞:Simon & Garfunkel「A Most Peculiar Man」(とても変わった人)

近ごろ、近所で電車が長時間にわたって停車することが相次いでいる。人々がぞろぞろ出てきて、パトカーや救急車もやってきて、何が起こったのかは把握できる。自分は「事故」の見物になど行かない。かといって、踏切にいたという知らない誰かに思いを致すことも、無関係の単なる近隣住民のひとりでしかない自分にはできない。なるべく視界に入れないようにして、日常生活を続けるしかない。それ以外にできることが何もない。

「とても変わった人」は、それほど変わっていない人たちには想像もできないようなことを深く気に病んでいたり、苦痛に感じていたりして、日々傷つきながらも、その状況を誰にも説明できず、理解もしてもらえなかったのかもしれない。この曲が終始穏やかなアルペジオに乗って最後までのんびり進んでいくのは、彼をやんわりと遠ざけて平穏に暮らしている世間の立場から歌われているから。自分もその世間のひとり。

生きていて、孤独でいたいと思うことならしょっちゅうあるが、疎外されたいと思ったことは一度もない。孤独感と疎外感は全然違う。自分は疎外されるのは絶対に嫌だ。むしろ疎外されるのが嫌だから孤独を求めるところすらある。

「あの人はとても変わった人だったのよ」
リオダン夫人はそう言った
彼女もそれぐらいは知っていた
彼の上の階に住んでいたのだから
とても変わった人だった、と彼女は言った

彼はとても変わった人だった
家の中でひとりぼっちで暮らしていた
部屋に閉じこもり、自分に閉じこもり
とても変わった人

友達もいなければ、ほとんどしゃべりもしない
世間の側からも彼に話しかけたりしなかった
愛想は悪いし何を考えているかわからなかったから
彼はほかの誰とも違っていたのだ
何なんだろう、あいつは本当に変わった奴

先週の土曜日に彼は死んだ
ガス栓を開けたまま眠りについた
窓を閉め切って、もう二度と目覚めなくていいように
目覚めても音のない世界とちっぽけな部屋があるだけ
リオダン夫人は言った
どこかに兄弟がいるから
すぐに知らせが行くはずだと

皆が口々に言った
「死んでしまうなんて、かわいそうに」
「でも、とても変わった人でしたよね」

IMG_20190726_152321 (2).jpg

タイトルとURLをコピーしました