訳詞:The Zombies「A Rose For Emily」(エミリーにバラを)

ゾンビーズの「A Rose For Emily」の題名が、「エミリーに薔薇を」という古いアメリカの小説から取られていることを、自分は最近まで知らなかった。その小説を読んだことは今のところないけど、紹介文には「名家の老嬢エミリーの死後、閉ざされた部屋に残されていたものとは……」とあり、ミステリーの古典だという。この曲の歌詞にミステリーの要素があるかどうかよくわからないけど、「名家の老嬢」というイメージはたしかにこの曲にぴったり当てはまりそうだ。また、この曲が作られる1年前の1966年には、ビートルズの「Eleanor Rigby」が出ている。エミリーという孤独な年老いた女性の人生と死には、同じく孤独な老女エリナー・リグビーの姿が二重写しになる。結婚式があった会場で米粒を拾う庶民らしいエリナーに対して、エミリーは名家の庭園でひとり毅然と薔薇を世話し続ける気高い女性。この孤高さがゾンビーズである。

「A Rose For Emily」は「Odessey and Oracle」というアルバム全体を象徴するような1曲で、歌とピアノだけというきわめてシンプルな構成なのに、クラシカルな気品高いコーラスからは華麗で甘美な世界がふわりと浮かび上がってくる。自分が持っている30周年記念盤にはバイオリンの入った別バージョンも収録されているけど、そのバイオリンすら余計に感じられてしまうほど、ピアノ1台の伴奏で完成され尽くしていて、まさにガラス細工のような繊細さで成り立っている曲。音楽の力だけで、一輪の薔薇の美しさを余すところなく表現している。紛れもない名曲。花の美しさが時代を超越するのと同じように、1967年から55年経った今でもこの曲の研ぎ澄まされた美は揺るがない。エミリーに薔薇を贈る人は誰もいなかったけど、薔薇の代わりにエミリーのお墓に手向けられた音楽の捧げ物は、枯れることなく永遠に咲き続けると自分は信じる。

夏がとうとうやってきて
空をどんより雲が覆う
そしてエミリーに薔薇を贈る人はいない

彼女が花を世話するそばを
恋人達が来ては去り行く
彼女の育てた薔薇を捧げ合うため
でもエミリーに薔薇を贈る人はいない

エミリー、わかりますか
あなたにはどうすることもできないと
(ごらん、今日もまた太陽が輝く)
愛はそこかしこにあふれているのに
あなたに愛を捧げる人はいない

育てた薔薇はしおれ始め
それでも気高く暮らす彼女
そうして苦しみから自分を守っているのだ

やがて月日は流れゆき
彼女は老いて死ぬだろう
庭園の薔薇も枯れていき
墓に供える花はひとつも残らない
エミリーのための薔薇は残らない

エミリー、わかりますか
あなたにはどうすることもできないと
(ごらん、今日もまた太陽が輝く)
愛はそこかしこにあふれているのに
あなたに愛を捧げる人はいない

育てた薔薇はしおれ始め
それでも気高く暮らす彼女
そうして苦しみから自分を守っているのだ

やがて月日は流れゆき
彼女は老いて死ぬだろう
庭園の薔薇も枯れていき
墓に供える花はひとつも残らない
エミリーのための薔薇は残らない

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