訳詞:The Zombies「This Will Be Our Year/Butcher's Tale (Western Front 1914)」

ゾンビーズは自分にとって、高校生時代からずっと心の親友みたいな特別なバンド。10代の終わり頃には、ウォークマンでゾンビーズを聴きながら夜の真っ暗な住宅街を文字通りゾンビのように散歩して、色々なことを考えた。4年前に当ブログを立ち上げる直前、幸運にも出張先のサンフランシスコでライブを観ることもできた。当ブログに載せた第4号の記事は、そのライブの模様を書いた「フィルモアで2018年のゾンビーズを見た」だった。あの素晴らしいライブの思い出を忘れないうちにと、一心に文章を書いた。そのとき、このブログを始めてよかったな、と自分の中で初めて大きな手応えを感じた。そんなこんなで、ゾンビーズは本当に大切なバンドなのである。

そのゾンビーズのベーシストにして、ロッド・アージェントと並ぶ素晴らしいソングライター、クリス・ホワイトが生まれた日が昨日3月7日だった。1943年生まれで、ビートルズのジョージとはわずか11日違いの同い年。一日遅れてしまったけど、79歳のお誕生日、おめでとうございます!

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上の写真は「Odessey and Oracle」のCD裏ジャケを無理矢理アップで撮影したもの。ぜひアナログで欲しい生涯の愛聴盤である。一番ヒットした有名な曲はロッドの「Time Of The Season(ふたりのシーズン)」だけど、このアルバムに入っているクリスの曲も、歌詞も含めて最高のものばかりで、「ふたりのシーズン」とは別にシングルカットされた「Butcher’s Tale (Western Front 1914)/This Will Be Our Year」は両面ともクリスの曲。お誕生日を記念して、両面とも訳してみた。

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「This Will Be Our Year」は自分にとって特別中の特別に好きな曲でありながら、力強く鳴り響くピアノがあまりにも印象的なので、ロッドの曲だと最近まで勘違いしていた。毎年正月になれば、今年はこんな年になるといいな、と思い出す曲だけど、終わらないコロナ禍に戦争と、今年もどうやら相当厳しいようだ。それでも、いつかこんな年を迎えるために生き続けよう、と何年経っても気持ちを温かくしてくれて、心の底から希望を浮かび上がらせるような曲と歌詞だと思う。書かれたのは55年前だけど、50年でも100年でも永遠に輝き続けるだろう名曲。

「Butcher’s Tale (Western Front 1914)」は、前線で戦わされる兵士の目線で戦争のむごたらしさをつづった曲で、時代設定は第一次世界大戦なのだけど、もちろん当時進行していたベトナム戦争もクリスの念頭にあったはずだし、リリースから50年以上が経った今になって、まさにそのまま再び切実に響くようになってしまった歌詞である。2回の世界大戦では飽き足らず、その後もベトナム、湾岸、アフガニスタン、イラク、シリア、ミャンマー、そしてウクライナと、世界各地で何度も何度も悲惨な戦争や内戦が繰り返される現状が、クリスの訴えたかったテーマだろう。屠殺の現場なら見慣れているはずの、肉屋の息子でも震え上がってしまう戦場の現実。それを知っているのは前線で戦う兵士たちと、死骸に群がる蝿だけ、というとても痛烈な内容である。この曲の内容が真の意味で過去のものになるときはいつ来るのだろう。つい、もうダメなのではないかと絶望しそうになるけど、いつか喜びをもって「This Will Be Our Year」が歌える年を迎えられるように、という希望だけは捨てるわけにいかない。シングルAB面ともに、とても大切な曲。最高のベーシストにしてソングライター、クリス・ホワイトに改めて心からの感謝を。

君の愛の暖かさは
太陽の暖かさみたい
今年は僕らの年になる
やっとここまで来られたね

僕の手を放さないで
暗闇は過ぎ去ったよ
今年は僕らの年になる
やっとここまで来られたね

忘れないよ
落ち込んでいたとき 君が引っ張り上げてくれたこと
そして忘れない 君がこう言ってくれたこと
「あなたを愛してる」
そんな君を信じて前に進むことができたんだ

ついにたどり着いた 僕らはまだ始まったばかり
今年は僕らの年になる
やっとここまで来られたね

君の暖かい微笑み
僕に微笑んでおくれ 可愛い人よ
今年は僕らの年になる
やっとここまで来られたね

もう心配しなくていいんだよ
苦悩の日々は過ぎ去った
今年は僕らの年になる
やっとここまで来られたね

決して忘れないよ
落ち込んでいたとき 君が引っ張り上げてくれたこと
そして忘れない 君がこう言ってくれたこと
「あなたを愛してる」
そんな君を信じて前に進むことができたんだ

ついにたどり着いた 僕らはまだ始まったばかり
今年は僕らの年になる
やっとここまで来られたね

肉屋、それが僕の職業だった
でも今の僕はイギリス軍の俸給をもらう身
肉屋のままだったらよかったよ
こんな殺戮を目の当たりにするぐらいなら

伝道師が説教壇で語る
「戦場に行きなさい 正しいことをなすのです」と
でも彼はこんな銃声を聞かなくていいんだから
夜もぐっすり寝てることだろうね

そして僕は
震えを止めることができない
手の震えが止まらない
腕の震えが止まらない
精神の震えが止まらない
家に帰りたい
どうか家に帰らせて
帰らせて

友達の無残な姿を見た
ぼろ人形みたいに鉄線に宙づりになって
うだるような暑さの中 無数の蝿が降り立ち
そいつを真っ黒に覆ったんだ
こんな蝿たちが各地に降り立った
ゴムクール、ティプヴァル、
マメッツの森、フランスのヴェルダンに
伝道師があの蝿たちを見ていれば
銃声を称える説教なんかしないだろうに

そして僕は
震えを止めることができない
手の震えが止まらない
腕の震えが止まらない
精神の震えが止まらない
家に帰りたい
どうか家に帰らせて
帰らせて

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