訳詞:XTC「Complicated Game」

最近はもう、ニュースを見るのがほとほと嫌になった。まさしく狂気の権力がもたらす凄惨な現状を、とても毎日は直視できない。ここまであからさまに非道な戦争は、さすがに過去のものだと思っていたのに。いくら悪いことだと反対しても戦争は太古の昔から繰り返され、始まってしまえば誰にも止められない。もちろん日々盛んに報道されるから目に入ってくるだけで、規模の大小を問わず理不尽で悲惨な暴力はいつでも世界のどこかで起きている。こんなときだけことさらに戦争のことを憂うのも、どうにも偽善的だと感じることは確かだ。この現状にどう対処したらいいのか、混乱したままモヤモヤとした日々を送るばかり。無力感が半端ない。

今朝はXTCの「Complicated Game」がいつものBGMシャッフルで流れてきて、久しぶりに聴くこの曲が何だか心に刺さってきたので、歌詞を訳してみる気になった。訳す際の参考として、アンディ・パートリッジ自身がこの曲について語るインタビューを読んだ(原文:chalkhills.org/抄訳:XTC Best Band Ever)。XTCの活動に無力感を覚え始めていた時期に書いたものだという。バンドの活動を自分たちではまったくコントロールできず、ツアーに追い立てられるばかりという無力感。当初のデモはボブ・ディラン風にギターをかき鳴らして歌うフォーク調のもので(ちょうど今これを書いているときに「Fuzzy Warbles」収録のデモバージョンがまたシャッフルで流れてきた)、ギターコードの緊張感から歌詞が浮かんできたのだそうだ。ミドルの部分に登場する「トム」はトム・ロビンソン、「ジョー」はジョー・ストラマーとどちらも実在のミュージシャンから取られていて、人物ではなくありふれた名前の響きが歌詞のテーマに合っていたからとのこと(音楽雑誌をめくって出てきた名前をそのまま使ったらしい)。

インタビューの中でアンディが興味深い発言をしている。何をしても無駄という無力感を歌った曲だが、些細な取るに足らないようなものが大きな役割を果たすこともあるというのだ。「中国で蝶がクシャミをすると、その効果が巡り巡ってチリでハリケーンを起こす」という、いわゆる「バタフライ効果」に言及している。右派と左派のどちらに一票を投じようと、何も変わらないかもしれないし、もしかすると大きな変化が生まれるかもしれないし、それは誰にもわからないのだと。なるほど。複雑な世界では一見すると無関係なものでもすべてがつながっている。だから単に無力さに絶望しているだけではなかったのだ。それでこの曲が今日の自分に刺さってきたのかもしれない。アンディだって、ひたすら「どうせ何をしても同じ」と訴えながらもあんなに凄まじいギターを弾き、曲の終わりでは絶叫しているではないか。

僕は自問する 指を左に置くべきだろうか?いや
では右に置くべきだろうか?それも違う
あえて言うなら 指をどちらにやっても仕方がない
どうせ誰かがやって来て動かしてしまうんだから
いつ何をしたって同じこと
世界はあまりにも複雑なゲーム

女の子が僕に聞く 髪を左に分けた方がいい?いや
じゃあ右に分けた方がいい?それも違う
あえて言うなら 左右どちらに分けても大差ない
どうせ誰かがやって来て動かしてしまうんだから
いつ何をしたって同じこと
世界はあまりにも複雑なゲーム

男の子が僕に聞く 左派に投票すべきだろうか?いや
じゃあ右派に投票した方がいいのか?それも違う
あえて言うなら 左右どちらに投票しても変わらない
どうせ誰かがやって来て動かしてしまうんだから
いつ何をしたって同じこと
世界はあまりにも複雑なゲーム

トムが選び出され
ジョーにも白羽の矢が立ち
衣装を着せられショーに引っ立てられた
矢のように放たれて標的にはかすりもせず
世界はあまりにも複雑なゲーム

神が僕に尋ねる この世は左側に築くべきであろうか?いや
ならば右側の方がよいと思うか?それも違う
あえて言うなら神よ、世界の成り立ちなんてどうでもいい
どうせ誰かがやって来て動かしてしまうんだから
いつ何をしたって同じこと
世界はあまりにも複雑なゲーム

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