「McCartney III」を聴いた

先日出た「McCartney III」は自分がリアルタイムで初めて接する「McCartney」シリーズ。1作目が出たのは50年前、「II」も40年前で、まだビートルズも知らなかった頃。「III」はリリース日の12月18日にSpotifyで何周か聴いて、今日も聴いている。とりあえず「聴いた」以外のことはあまり書けなさそう。一聴して、やっぱり良い、凄い、ということはよく分かるのだが、自分の中にすみずみまで浸透させるには、落ち着いて聴く時間がもっと必要。何となく、もっと手早くテクノロジーを使って気軽に作られたものを予想していたけど、たっぷりステイホーム時間があったからなのか、かなり手間暇をかけて作り込まれている感じがする。曲調も、いかにも実験作っぽいものから、普通にポップなアップテンポのロック、どえらく格好いいハードなブルース、定番の爪ピッキング弾き語り小品と、バラエティに富んでいて何というか全貌がつかみきれない。2020年の最後にポールからぽいっと渡された一品は、受け取ってみたら意外にずしっと重くて、ゴリッと手応えのある、かなり手の込んだ多層的なものだった。

今のところ一番印象に残っているのは「Deep Deep Feeling」。8分半という長い曲で、その名の通りディープに引きずり込んでくるような調子で続くのだが、かなり細かく音を切り貼りして構築されているようで、本作の中でも一番テクノロジーを駆使して作り込まれていそうな曲。それでも、曲を構成している音はポール自身がアナログに演奏していることがすぐ分かる。ポールが出す音はすごく独特なのだ。ドラムの音はビートルズ時代の「ジョンとヨーコのバラード」とか「Come And Get It」のデモとか、あの辺から一貫して変わらないので、近年の作品でもポールがドラムを自演しているとすぐに分かる。ギターのフィンガーピッキングのサウンドも「Blackbird」あたりから変わらない。もちろんベースもヴォーカルも。アナログな演奏者として出す50年前、60年前から一貫して不変の音と、それをデジタルに構築するテクノロジーへの理解と、ポールの中にはどれもが現在進行形で並列に存在していて、自分の持てるすべてを総括してひとりぼっちでこんなものを作り上げてしまうんだなあと、やっぱり凄いなあと、それしか出てこない。


もう一つ印象に残るのはやっぱり最後の「When Winter Comes」。50年前の「McCartney」に入っていても全然おかしくないやつを最後に持ってきて、あのときと同じ農場でステイホームしてるんだよ、僕も全然変わってないよ、と言わんばかりに終わる。1970年の1作目から一周して、すべては変わったけど、実は何も変わっていない、という終わり方が「III」のすべてを象徴しているのかも、と自分はうっすら思った。

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