Neil Young「Songs For Judy」

自分はニール・ヤングの全作品をくまなく聴き込んだマニアでは全然ない。本気で自分の一部になっていると思うアルバムが5~6枚ぐらい、血肉になっている大切な曲は何十曲とあって、高校生の頃からずっと聴き続けている。ギターを持てばたいていニール・ヤングの何かしらの曲を自然に弾いてしまう。でも、キャリアが長くて多作なニール・ヤング、まだ聴いたことのないアルバムも正直たくさんある。近年次々と発表される過去の発掘ものにも追いつけていなかった。

昨年の暮れに出ていたという、76年ツアーのアコースティックセットの演奏を集めたアルバム「Songs For Judy」も最近まで存在を知らなかった。先日の米国出張に出かける飛行機で暇つぶしに機内放送を物色していたら、このアルバムが入っていた。なぜかANAの機内でニール・ヤングのアーカイブシリーズに出会うことが続いていて、前回は「Roxy」だった。一番好きかもしれない「今宵その夜」をライブでそのまま再現したような素晴らしい演奏、とても気に入った。しかし今回の「Songs For Judy」はそのさらに上を行くものだった。こういう発掘音源もののアルバム、どうしても未発表曲、レア曲などマニアックな話題が目につくだろうけど、ここで聴ける音楽の内容は決してマニア向けではない。バッファロー時代の「Mr. Soul」から「Sugar Mountain」「Tell Me Why」「Harvest」「Heart Of Gold」「Journey Through The Past」「Pocahontas」と、70年代中盤までの代表曲がまんべんなく入っていて(「Pocahontas」は79年の「Rust Never Sleeps」が初出、当時未発表)、すべてアコースティック弾き語り中心のコンパクトな演奏。とても聴きやすい。個人的には弾き語りで聴く「Harvest」のど名曲ぶりに改めてぐっと来た。「The Losing End」が取り上げられているのもすごく嬉しい。


自分が愛してやまない「今宵その夜」からも2曲取り上げていて、「Mellow My Mind」はバンジョー弾き語りという変わったアレンジで面白い。変わったアレンジといえば「A Man Needs A Maid」もイントロと間奏をオルガンでやっていて印象的。最初「Like A Hurricane」かと思うメロディが出てくる(ずっと後年に「アンプラグド」でやったバージョンと似ている)。ほかにも聴きどころ満載。ギターと歌だけで物足りないなんてことはまったくなくて、むしろこういう純粋な形の方がニール・ヤングの良さがダイレクトに伝わってくると思わせる、充実した演奏。未発表曲・レア曲もさすが70年代ニール・ヤング、しみじみ良い曲ばかり。ハッピーサッドな「Give Me Strength」がとても心に響くし、「No One Seems to Know」は地味ながら「After The Gold Rush」的なピアノの美しい曲で、珍しくディミニッシュコードを多用している。

と、ここまで書いて、同じ76年にやはりアコースティック弾き語りのみでスタジオ録音された未発表アルバム「Hitchhiker」も一昨年に出ていたことを知って、Spotifyでひととおり聴いた。「Songs For Judy」よりも内にこもった静かな演奏。テンションが低いともいえる。ニール・ヤングは当時リリースするつもりだったようだが、レコード会社は「これはデモだろう」という反応で、お蔵入りになったらしい。たしかに、これはニール本人も本当に世に出すことを意図して演奏したのかな、という印象を受けた。こちらの方こそ「マニア向け」と言ってよさそうだけど、夜中に部屋を暗くして静かに聴きたいときなどには良いかもしれない。

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