Neil Young & Stray Gators「Tuscaloosa」

ニール・ヤングのライブ発掘シリーズ、今月になってまた凄いのが出ていた。タスカルーサはアラバマ州の都市名だそうで、この地で行われた73年のライブ、「ハーヴェスト」のレコーディングメンバーそのままのストレイ・ゲイターズがバックバンドである。同作からは「Out On The Weekend」「Harvest」「Heart Of Gold」「Old Man」「Alabama」をやっていて、どれも本当にいい。こういう、大好きなアルバムが録音された直後に同じメンバーで演奏されるライブ、非常に好きである。「今宵その夜」の「Roxy」もそうだったけど、そのアルバムの雰囲気を同じ演奏者でそのまま再現しながら、ライブだから微妙に違うというのがとても惹きつけられるところ。


「ハーヴェスト」の音質は全体に霧がかかったようにくぐもっていて、近年のリマスター盤を聴いても印象は同じなので元々そうなんだろうが、このライブ盤では目の前で演奏しているように生々しい音。とくに「Out On The Weekend」は、ぐっと落ち着いたテンポでどっしり演奏していて、しみじみとすばらしい。アルバムの頭にソロで2曲やった後、ニールが「次は友達と演奏するよ」と言いながらこの曲のリフを刻み始め、おもむろにバンドが入ってくるところが本当に最高。「Harvest」はイントロでメンバー紹介を織り込みながら、紹介されたメンバーがひとりずつ演奏に加わる。こういう演出も楽しいし、「Harvest」って本当にいい曲だな、とあらためて。曲そのもののつくりは単なる長閑なカントリー調なのに、ニール・ヤングが歌ってストレイ・ゲイターズが演奏すると、どうしてこうも胸が締め付けられるのか。こんな風に、何千回と聴き込んだ名曲の良さを新しい気持ちで再認識させてくれるのである。

この今月発売されたばかりの発掘ライブ盤を見つけたのは、最新音楽情報を欠かさずチェックしているからではなく、まったくの偶然。最近ふと、ニール・ヤングのアルバムで自分が一番好きな「今宵その夜」に入っている「New Mama」のイントロのギターをちゃんとコピーしてみたくなって、参考のためにSpotifyでライブテイクなどを探していたら、出たばかりのこのアルバムのバージョンが引っかかったのだ。「今宵その夜」のバージョンではアコギ一本の演奏でコード進行も小節の頭も判然とせず、ちょっとコピーに苦戦していたのだが、「Tuscaloosa」ではイントロからフルバンドで演奏していて、おかげで曲のつくりが把握できた。バンドアレンジでもギターのフレーズ自体はまったく同じなので、このバンド版が絶好のガイドになって首尾良くコピーできた。「New Mama」を弾いてみようと思い立ったそのときに、ちょうどこんな発掘ライブ盤が登場してギターの種明かしをしてくれたのである。ありがとうニール・ヤング。

このバンド版「New Mama」はラウドなエレクトリックアレンジで、これも面白いけど、やはり「今宵その夜」に入っているアコースティック版の壊れそうな美しさには到底かなわないと思う。あの「I’m living in a dream land~」のところでメジャーに転調して天に昇っていくコーラスが一番印象的な部分だから。「今宵その夜」からは「Lookout Joe」も入っている。このライブから数カ月後にクレイジー・ホースのメンバーやニルス・ロフグレンと録音して、内容が暗すぎて2年間お蔵入りになったのち75年に出たのが「今宵その夜」。発表時期は離れているが、「ハーヴェスト」だけでなく「今宵その夜」とも関わりがあるライブ。

そして73年当時に出たライブアルバム「Time Fades Away」収録曲も2曲。このアルバム、「ハーヴェスト」「今宵その夜」と同時期のニール・ヤングなのに、自分は何の思い入れもない。どういうわけか一度もCD化されたことがなく、ごく最近になってSpotifyで聴けるようになるまで聴いたことがなかったのだ。「Don’t Be Denied」は紛れもない名曲だと思う。この曲がどうして普通にベスト盤に入っていないのかわからない。無意味に知る人ぞ知る状態が長く続いたために、10代でとっくに出会っていてしかるべきものに40代も半ばを過ぎてから出会ってしまって、ちょっと素直に受け入れられない気持ち。昔からほかの作品みたいに普通にCDで聴けて、高校生の頃に「Don’t Be Denied」に出会っていたらどんなだったろう、と思う。


……というか、これを配信だけで済ませてはダメだろうという気持ちが強くわき起こってきて、CDを注文した。さらに、先日記事にした「Songs For Judy」も一緒に。最近まで圧縮方式での音楽配信に強く抵抗していたニール・ヤング、自分がSpotifyを始めた直後に全作品の配信を解禁してくれたのだが、こういうただ事では済ませられない作品はやっぱり現物を買わなければ。ライナーを読みながら聴き込みたいし、ネットに依存せずに聴けるようでありたい。ネット配信の便利さ、有り難さも十二分に享受した上で言っているのだが、こういう作品に関してはネットからやってくるストリームではなく確かな実物を手に入れて後生大事にしたいと思わずにはいられない。

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