ニール・ヤングの新作「World Record」のCD、46分で2枚組の謎

ニール・ヤングが盟友クレイジー・ホースと組んで、新作「World Record」を一昨日リリースした。同じくクレイジー・ホースとの前作「Barn」から1年も経たずしての新作。今月で77歳になったニール・ヤング、創作意欲はとどまるところを知らないようで、怒濤の活動ペースには本当に圧倒されてしまう。本作の詳しい内容や近年のニール・ヤングの活動については、萩原健太さんのブログに非常にわかりやすくまとめられているとおりであって、当ブログの出る幕ではない。それどころか実は、自分はまだこの新作を2曲しか聴いていない。



現在の自分はネット音楽配信を利用していないので、ちゃんと聴くにはCDを買わなければならない。「Colorado」「Barn」と、ニール・ヤングとクレイジー・ホースが出した近作はCDで購入してきた。YouTubeでビデオクリップが配信されている「Love Earth」を聴いて、よし、これもCDで買おうぞ、といつものようにAmazonに行ったら、国内盤CDが3300円もするではないか。高い!輸入盤は、入手不可。タワーレコードの通販サイトを見てみても、国内盤は同じ価格、輸入盤は円安の影響なのか4401円というとんでもない価格(いずれも当記事を書いている時点)。なぜこんなに高いのかというと、2枚組CDなのである。アルバム全体の再生時間は46分。1枚のCDに余裕で収まる時間なのは言うまでもない。「???」となってしまい、ニール・ヤングの公式サイトを見てみた。以下は、「World Record」のCD商品ページにあった説明の抜粋。

To optimize audio quality, the vinyl format of World Record will be released as a three-sided double album with an etching on side four.
World Record will also be issued on cassette and as a double CD set (mirroring the track sequence of the double LP).

まず、本作はアナログ盤でも発売され、最高の音質を得るために2枚組LPとしてリリースされるという。46分なら1枚のLPにもギリギリ収まる時間だけど、アナログ特有の弱点として盤の内周に近づくほど音が歪むという問題があるので、46分の作品でも2枚組(3面のみ収録、余った第4面にはエッチングが施されているという)にするというのは、音質にこだわるニール・ヤングのことだから、まあわかる。そして、なぜCDまで2枚組なのかというと、「2枚組LPの曲の並びを反映して」なのだという。ええっ??これは、まったく意味がわからない。1枚でいいはずのCDが、LPに合わせて2枚になったところで、音質が良くなるわけでもないのに、誰が喜ぶのだろうか。LPよりも格段に収録時間が長く、最初から最後まで一定の音質が保たれることがCDの長所である、なんていちいち言うまでもない。そして、AB面をひっくり返したり、2枚組だったら盤を入れ替えたり、とたびたび席を立つ手間がない。そんなCDならではの利便性が2枚組ではまったく生かされない上に、高い。何だろう、これは。何でこうなった。テル・ミー・ホワイ。

ニール・ヤングはどういう形で自分の音楽をリスナーに届けたいのか、改めて考える。低音質のネット音楽配信に対抗して、2014年に「PONO」という高音質の音源ダウンロードサービスとプレイヤーを自ら開発。結局それは短命に終わったものの、会員制の公式サイト「Neil Young Archives」を立ち上げて、全キャリアを網羅した高音質配信を実現している。自分が知る限り、ニールが主に苦言を呈していたのはMP3のような圧縮オーディオの音質だったけど、CDについても「マスタートラックのデータの15%しか再生できない」としている(WIRED JAPAN「ニール・ヤングはなぜMP3を嫌うか」より)。CDに対しても、ずっと思うところはあったんだろう。

手軽に聞きたければネット配信、音質重視ならハイレゾダウンロード、モノを手にして喜びたいならアナログ(「World Record」はカセットでも出ている)。CDという媒体はどの面から見ても中途半端だ。今やニール・ヤングにとってのCDはメインストリームの音楽提供手段ではなく、よほどの物好きが買いたければ買えばいい、という位置付けなのかもしれない。しかしちょっと今回、自分はニール・ヤングが想定するリスナー像のどれからもこぼれてしまった感じだ。ごくシンプルに言って、46分の作品なのだから、1枚のCDとして普通の値段で買いたかった。そして何よりも、「Love Earth」でも歌われているように、地球環境保護への切実な問題提起をずっと続けてきたニールが、どうして1枚で済むCDを2枚組で製造させているのか。今のところ、やはり理解しづらくてモヤモヤが残る。ニール本人からもう少し説明はないものだろうか。しばらく、この件は様子を見ることにする。

後記:様子を見た結果は、こちらの関連記事をどうぞ。Neil Young「Chevrolet」~ニール・ヤングにサブスクリプションした

タイトルとURLをコピーしました