Nirvana「Nevermind」30周年記念盤、東京公演の冒頭数曲を聴いた

ニルヴァーナの「Nevermind」が1991年に発表されてから今年で30周年。とうとうこのアルバムも30周年記念盤として、5枚組スーパーデラックスエディションという形で登場するに至った。30年前、本作を聴き狂っていた当時は、そんな大掛かりなものが何十年も後に出ることになるとはまったく想像すらしなかった。しかも、1992年2月19日の中野サンプラザ公演の模様が全編収録されるという。そのことを知ったとき、何だか正直、うっ、と複雑な気持ちになった。自分は、まさにその場にいたのだ。実家の近所でニルヴァーナのライブを観たことは自分の今までの生涯でも指折りの体験で、30年経っても特別な思い出として残っている。あの公演が正式に発表されて、もちろん嬉しくないわけがない。そんな録音があったなんて全然知らなくて、ちょっと驚いた。

ただ、91~92年当時の絶頂期ニルヴァーナが残したライブ録音は、すでにいくらでも聴ける。本拠地アメリカで観客が暴れまくるスタンディング会場と、まだニルヴァーナが知る人ぞ知る存在だった日本のホール会場では、盛り上がりの差も段違いだったはず。自分の記憶では、東京公演でも周囲の観客(半分以上が外国人)が最初から最後までバンドと一緒に大合唱しまくり、会場一体となって大いに盛り上がっていたけど、あれから30年経って正式な録音を改まって聴いたとき、本拠地での絶好調ライブと比べて見劣りのするような白けたものに聞こえたら嫌だなあ、と余計な心配をしてしまったのである。でも、もうストリーミングでも公開されている以上、いつまでも聴かないわけにもいかない。昨晩、ライブ1曲目「Negative Creep」をおそるおそる聴いてみた。


いや、変な心配をした自分がバカだった。上記はまったくの杞憂に過ぎなかった。このとき演奏された「Negative Creep」、やっぱりめちゃくちゃ格好いい。ひいき目はあるとしても、他の同時期のライブと比べても見劣りしないどころか、これが一番格好いい演奏だったんじゃないかとすら思える。実は、自分も当夜はこっそりウォークマンを持ち込んで公演の模様をカセットに録音していて、このときの演奏は素晴らしかったから後で何度も繰り返し聴いた(もちろん私的利用のみ)。正式発表されたこのライブ録音も、リバーブのかかり方とか、全体的な音の感じがあのカセットと似ている。聴いた感じ、パートごとに音が分離したマルチトラック録音ではなくて、客席側からステレオマイクで録音したものではないだろうか。あのとき自分が録音していたカセットの音質をぐっとクリアにして、自分の歌っている声(これが入ってるから人には聴かせられない)を抜いたら、こんな音になりそうなのだ。つまり、自分が客席から体験したあのライブの再現としては、この上なく理想的。自分としては、きちんとしたマルチトラック録音よりも、会場の雰囲気が丸ごと蘇ってくるこちらの方がうれしい。こんな録音が残っていて、公式に発表されたことには、心からありがとう、と言いたい。

「Negative Creep」の演奏が終わって2曲目を始める前に、カートが「Good morning」と挨拶する様子も聴ける。このシーンも自分はよく覚えている。当夜のカートは、普通に百貨店で売ってそうな縦縞のお父さんパジャマ姿でステージに登場したのだけど、自分は後でライブレポートを読むまでこれがパジャマだとは気付かず、上下ストライプのスーツだと思っていた。その場では、夜なのに「おはよう」なんてとぼけてるなあと思ったけど、パジャマ姿に引っかけていたのだ。

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おはようの挨拶の後に演奏したのは「Been A Son」だった。この時点では「Blew EP」(英国のみ限定発売)にしか収録されていなかった曲で、当時の自分はまだ聴いたことがなかった。ライブで初めて聴く曲というのは、ものすごく印象に残る。「Been A Son」はごくシンプルな作りだけど、ビートルズっぽいハーモニーのとても綺麗な曲で、一発で完全にやられてしまった。こんなにシンプルで美しい曲がどうやったら作れるんだろう、自分にもこんな曲が書けたらなあ、と強く思ったのを覚えている。この演奏も、今聴いても本当に良い。冒頭2曲だけでもうお腹いっぱいという感じで、まだ最初の数曲しか聴いていない。この夜のことは、ライブ全編を聴いた上でまた改めて思い出して書きたい。

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