No one I think is in my tree、その2

松村雄策さんの新刊が今月下旬に出る。もうAmazonで予約注文してあって、届くのをとても楽しみにしている。闘病中にタイトルを決め刊行を進めていた10冊目のエッセイ集とのことで、そのタイトルが「僕の樹には誰もいない」だという。個人的にはとても嬉しいタイトルである。なぜなら、当ブログの記事にもだいぶ前にたまたま、「No one I think is in my tree」という同じようなタイトルを付けたことがあるから。記事の内容自体はまったく大したことないけど。


言うまでもなく、この一節はビートルズの「Strawberry Fields Forever」から引用した。この曲の歌詞も「All You Need Is Love」と同じように、解釈が分かれそうな難しい言い回しが出てくる。その「No one I think is in my tree」で始まる一節は特に難解。自分はこんな風に訳してみた。

No one I think is in my tree
I mean, it must be high or low
That is, you can’t, you know, tune in, but it’s all right
That is, I think it’s not too bad

僕の樹にはほかに誰もいないと思う
つまり 上にも下にも他者は存在しないってこと
だから 君たちが僕についてこられなくても まあ仕方がない
それも別に悪くないんじゃないかな

ビートルズがライブ活動を停止した1967年、松村さん言うところの「心のひきこもり」期にあったジョンによる他者隔絶宣言、というのが自分の解釈。「I mean/that is(つまり)」だの「you know(ほら)」だのと間投詞をモゴモゴと並べているのも、誰に伝えるでもない独り言という感じ。自分にはビーチ・ボーイズの「I Just Wasn’t Made For These Times」の歌詞も思い起こされる。

落ち着ける居場所を探している
心の内を打ち明けられる場所を
ふさわしい人たちを見つけようと必死なんだ
僕の話についてこられるような

僕は頭が切れる なんてみんな言うけど
その切れる頭が厄介の種になる
もっと役に立ってくれればいいのに
(中略)
ときどきとても悲しくなるよ
たぶん僕はこんな時代に向いてないんだろう

邦題の「駄目な僕」から受ける印象とは全然違って、逆に僕の頭が切れすぎて誰もついてこられないという天才の孤独を歌っているのだ。ロックの最前線でトップを目指そうと必死にしのぎを削っているうち、ふと後ろを振り向いたら誰もいなかった、という。この曲を収録した「Pet Sounds」は「Strawberry Fields Forever」の前年に出ている。BEAで始まる英米の二大バンドが、クリエイティブ面で互いに追いつき追い越せの熾烈な競争をしていた時期。

ただ、松村さんの「僕の樹には誰もいない」とは、こういう意味ではないような気が何となくする。ここ20年以上、ロック雑誌というものをほとんど読んでこなかったので、松村さんの新しい文章にも本当に長らく触れていなかった。自分の知らない21世紀の松村さん。どんな文章と出会えるんだろう。楽しみだ。

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