ノコンギクとは友だちになれたかもしれない

火曜日の朝。目覚めたときから冷たい雨が降っていたけど、いつも散歩に出る時刻には灰色の雲が少し明るくなって、雨が一時やみそうな感じだったので、歩くことにした。ここ6~7年ぐらいはほとんど毎日欠かさずに続けてきた朝の散歩、これで一日が始まらないとどうにも調子が狂うのである。いつも小雨ぐらいなら出てしまう。手袋をして出かけなかったのを後悔しつつ歩くうちに、雨はやむどころか次第に本降りになってきた。どうしてこんな冷たい雨の中、スニーカーを濡らしながら歩かなければならないのか。1時間かかるコースの半分あたりで、もう一刻も早く帰宅したくなってきた。急ぎ足で行程を消化するだけの散歩などちっとも面白くはないけど、とにかく歩かねば家に帰れない。

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ある決まった場所を通りかかるときに定点写真を撮るのも、朝の散歩では一つの習慣になっている。この朝の定点写真は、傘を差しながら急いでシャッターを切ったので、ピントがボケてしまった。こういう朝は何をやってもダメだ。それでも、冷たい雨の中せっかく出たのだから、道端の植物には目をやりたい。そうだ、野菊と「なかよしの友だち」になるんだった。先日の記事に書いたとおり、一口に野菊と言ってもカントウヨメナ、ノコンギク、ユウガギク、その他色々な種類があって、よくよく見ないと正しい名前で呼べないのである。別の晴れた朝にここを歩いたときに撮った野菊の写真、先日の記事にも載せたけど、もう一度。

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まずは手始めに、ここに咲いている個体の名前を特定してみようと決めていた。雨だからと先延ばしにしていては、すぐに冬になってしまう。あの記事を書いたときにネットで調べて、野菊の見分け方は少し学習してある。葉のざらつき加減を見るのも見分け方の一つだという(参考:Tam’s素人植物図鑑「カントウヨメナ」)〔リンクは現在表示不可〕。触ってみたら、明らかにざらっとしていた。カントウヨメナとユウガギクはざらつかないらしいので、だとしたらこれはノコンギクかもしれない。さらに決定的な特徴は、花の中にある冠毛の長さ。カントウヨメナとユウガギクは冠毛が非常に短くて肉眼では見えず、ノコンギクは冠毛が長いので種が風に乗って飛びやすいそうだ。この冠毛という部分は、タンポポなら綿毛に当たるところ。花が咲いている時期には内部にあって、花をほぐさなければ確認できない。雨も降っているし、これは家に持ち帰ろう。申し訳ないけど、花を2輪ほど取らせてもらった。ああ、なかよしの友だちになるにはいつもこうやって相手を傷つけなければならないのだろうか、と思いながらである。

持ち帰った花を自部屋のデスクでさっそく分解してみる。

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ふさふさと綿毛っぽい冠毛がはっきりと認められる。ネットで写真を確認してみれば、やっぱりこれはノコンギクの特徴と完全に一致(参考:京都九条山自然観察日記「ノコンギクとヨメナの違い」)。ひとまず、これで結論が出た。花の咲き方も、ほぼ同じ高さに枝分かれしてたくさんの花が付く様子は、ノコンギクの特徴だという。カントウヨメナは、小枝に一つずつ咲くようだ。今回の見分けは比較的簡単だった。今度からは、ノコンギクに別の場所で会っても花を分解せずに見分けられそうな気がする。やあノコンギクさん、と名前で呼べそうだ。なかよしの友だちになる第一歩を踏み出せた。雨降りでも散歩に出たかいがあったというものだ。

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自分は牧野富太郎博士の「卓上版 牧野日本植物図鑑」を持っている。3000種を超える植物の一つ一つに、牧野博士による細密な手描きの図と特徴の解説が付けられている。牧野植物学の集大成として15年の歳月をかけて執筆され、78歳のときに出版されたという、まさしくライフワーク。外で見てきた花の名前調べはお手軽なネット検索に頼るけど、この植物について牧野博士はどう言っているのだろう、と知りたいときにはこの図鑑をめくる。ヨメナ、ユウガギク、ノコンギクの項はすべて同じページに並んでいてわかりやすい。花の咲き方の特徴も明瞭に描かれている。これを見ても、今回調べた野菊はノコンギクで間違いなさそうだ。今度はカントウヨメナとユウガギクに挑戦してみるつもりだけど、この2種の正確な見分けはなかなか難しそう。牧野植物図鑑とネット情報によれば、(カントウ)ヨメナもユウガギクも葉はざらつかないのだが、ユウガギクの方が多少のざらつきがあるという(牧野植物図鑑の「糙澁ス」とは、ざらつくという意味)。とりあえず、散歩道で野菊を見かければ葉の触り心地をチェックする日々になるだろう。道端で咲いている野菊の葉をしきりになでながらうろうろしている50歳男を見かけても、決して不審者ではないので、どうか通報せず放っておいてもらいたい。自分は野菊となかよしの友だちになりたいだけなのだ(不審か、やっぱり)。

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