ポールの「Autocomplete Interviews」を観た

年を取って良かったと思える数少ないことの一つが、今も健在なビートルズのメンバーたちと年齢的に近くなったと錯覚できることである。自分とあの4人との年の差は29~32歳。ポールはちょうど30歳上。15歳と45歳だったら大違いだけど、50歳と80歳なら、「年を取った人間」という意味では大差ないように感じられるのだ。ポールと自分の父が同い年であることをことさら意識するようになったのも、自分が年を取った最近になってからのこと。一方で、ジョージが亡くなった58歳に自分がなるのも、あと8年である。同じ50代、わりともうすぐではないか。あと8年で終わる人生もあるのだと、これもまたリアルに実感できるようになった。この世を去った人の時間は、そこで止まってしまう。自分は年々そこに近づき、追い越していく。40歳で亡くなったジョンのことは、とっくに追い越してしまった。ポールとリンゴが自分と同じ世界で今も元気に生きていて、自分と同じ速度で年齢を重ねていることは奇跡のように思えてくる。この12月、大きな訃報が次々と目に入ってくる。ポールとリンゴにはいつまでも長生きしてほしい、本当に。

WIRED日本版で最近公開された、「Autocomplete Interviews」というインタビューシリーズのポール編を観た。オートコンプリートとは、Googleの検索ボックスにキーワードを途中まで入力すると、一緒に入力されることの多い語句などから続きを予測して候補を出してくれる、ネットユーザーには馴染みの深い機能である。ポールの名前を検索ボックスに入れると自動的に候補として出てくる質問に、ポール本人が答えるという面白い趣旨のインタビュー。ネットならではの無礼な質問(内容は明かされない)に激怒、なんてわざとらしいハプニングも挟みながら、ポールが持ち前の茶目っ気を存分に見せてくれる楽しい企画である。


この映像のポールはちょっと凄い。近年のポール、静止した写真で見ると限りなくお婆さん(お爺さんというより)に近く見えるときもあるけど、ここでの動くポールは老いをほとんど感じさせない。「Yesterday」を書いたときの夢で聴いた云々のエピソードなんてもう何千回も語り尽くしているだろうに、うんざりした様子は一つも見せない。観客が見たがっているのなら何度でも同じことを繰り返してみせて、心から楽しんでいる様子ですらあるという、本当に鉄壁のショーマン。ただ、公開日が数日前なのでてっきり今年収録された最新映像かと思って見ていたら、終わり間際になってポールが「新アルバム」として「Egypt Station」の宣伝をしている。このアルバムが出たのは2018年。どういうわけか、英語版公開から4年も経って、改めて日本語字幕を付けて紹介された映像のようなのだ。

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どう略したら「ハザー」になるんだろう

2018年といえば、自分が父と一緒に東京ドームでライブを観た年。あれから世界はすっかり変わってしまったけど、ポールが今も同じ世界で同じ時間の流れを共にしていることには、本当に有り難さしかない。ジョージもここにいてくれたら。コロナ禍はまだまだ終わらず、世界を大きく揺るがす戦争が始まってしまった今年の世界、ジョージにいてほしかったと、改めて心から思う。音楽は作らなくても、フライアー・パークの庭をいじっているだけでも全然いいから、同じ世界にいてくれたら。今年の世界でジョージはどんなことを語り、どんな行動をしただろう。とんでもない年だった2022年も、あと一週間ちょっとで終わる。

Ring out the old, ring in the new

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