Paul McCartney「Rainclouds」

雨降りの日が続くと、何か雨テーマの曲について書きたくなる。ポールの「Rainclouds」は「Tug Of War」のセッションで生まれ、「Ebony and Ivory」のシングルB面曲として1982年に発表されて以来、2015年に「Tug Of War」のアーカイブ・コレクションが出るまで、長らくCD化されていなかった。だからポールの曲の中で一般的な認知度はかなり低いに違いないけど、自分の中では昔から「いい曲」の引き出しに入っている。当時から「Ebony and Ivory」のシングルを持っていたわけではないのだけど、中学生ぐらいの頃にこの地味なB面曲がラジオでかかったのを聴いた記憶が確かにあって、いい曲だな、と印象に残っていたのだ。それから長い間、とりあえずネットで音が聴けるようになるまで、歌い出しの「Rain in the forest」とサビの「Rainclouds hide the sun」の部分だけが、ずっとおぼろげに頭の中に残っていた。


82年にシングルB面として発表された後、30年以上そのまま顧みられなかった「Rainclouds」だけど、どうでもいい捨て曲では決してない。やはりポールにとっては、ジョンが亡くなった日の記憶と密接に結び付いた、あまり触れたくない因縁の曲なのかもしれない。The Beatles Bibleの記事によれば、この曲のレコーディングは1980年の12月8日から9日にかけて行われ、9日朝にポールがジョンの死を知った直後にも、この曲の制作は続けられたという。唯一無二の親友が突然殺害されたという知らせを受けたその日に、いったいどんな雰囲気で作業を進めていたのか想像もできないけど、とにかく普段の仕事をしていれば気が紛れるというのはあったかもしれない。

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「Tug Of War」は、当初はウィングスのアルバムとして1980年末にレコーディングが始められていて、その最初期にできた「Rainclouds」はポールとデニー・レインの共作名義。ウィングスの作品として制作された名残が色濃く感じられる、デニー得意の英国フォーク風味がよく出た曲である。自分はデニー個人のファンとまではいかないんだけど、ウィングスでポールを補佐する第二の男として前面に出たときのデニーは輝いていた。ウィングスの作品の中でもデニー色が最も強い「London Town」は、ビートルズ後のポールの中で1番とはいわないまでも、たぶん2番目か3番目には好きなアルバム。デニーは「Tug Of War」制作途中の1981年4月にウィングスを正式に脱退して、ポールとは別れてしまう。「Rainclouds」は、デニーがウィングスの一員としてポールの隣で輝いた最後の曲ということになるのだろう。


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