RCサクセション「イエスタデイをうたって」と初期の名曲たち

自分が愛してやまない初期のRCサクセションは、忌野清志郎、林小和生、破廉ケンチのアコースティックトリオ編成。天才詩人・清志郎のソングライティングは美しく痛切な輝きに満ち、ドラムなしの3人が叩き付ける演奏は独自性の塊。ギター2本とウッドベースが危ういバランスのまま清志郎の叫びと組み合い、対決し、ぐいぐいドライブしていく。ちょうど自分が生まれた頃、1970年代前半のRCサクセションは、ほかのフォーク/ロックの国内シーンとはほとんど交わらず、まさに孤高の存在だったという。あと20年早く生まれて、この3人の演奏を生で体験したかった。

自分がこの時期のRCサクセションと出会うきっかけになったアルバムは、1990年にデビュー20周年記念として出たベスト盤CD「Best Of The RC Succession 1970~1980」だった。オリジナルアルバム収録曲のほかに、シングルのみで出た曲がいくつか入っていた。その中の一つが「イエスタデイをうたって」だった。

「イエスタデイ」とはもちろんビートルズの曲のことなのだけど、この曲はどちらかといえばジャズっぽくて、ビートルズ的な感じはほとんどない。ひねったコード進行に破廉ケンチの鋭角的なリードギターが絡んで、とても格好いい曲である。歌詞に出てくる「あの娘」が「イエスタデイをうたって」と言った理由は、ロマンチックな歌が聴きたいからではなくて、歌詞の内容にあるのだろう。ビートルズの「Yesterday」は、音楽的にはポピュラースタンダード然としているのに、歌詞には妙に生々しい実感がこもっている。前触れもなく突然やってきた現実に打ちのめされ、こんな今日なんて嘘ならいいのに、昨日までの気楽だった日々を信じたい……自分もしんどいことがあるたびに、しょっちゅうそんなことを思う。当時まだ20歳になるかならないかの清志郎は、スタンダード曲としての「Yesterday」ではなく、その歌詞に着目したのだ。こういうところが本当に並外れている。

20周年記念ベスト盤に収録されたおかげで自分は「イエスタデイをうたって」に苦労せずに出会えたのだけど、ほかにも初期のRCサクセションにはアルバム未収録のシングル曲がたくさんあった。これらの曲がCD化されたのは2000年代に入ってからで、初期RCを一番熱心に聴いていた90年代の自分は、知られざるシングル曲が聴きたくて聴きたくてたまらなかった。しかし、オリジナルシングル盤は1枚2万円とかそんな世界で、とても手が出ない。90年代終わり頃のある日、新宿駅東口にあった中古レコード店(名前は失念、ディスクユニオンではない)で、そんな憧れのシングル曲を一挙に収録した初期ベスト盤「HARD FOLK SUCCESSION」が壁に掛かっているのを見つけた。値段は1万5000円。買おうかどうしようか、本気の本気で悩んだ。いったん店を出て、しばらく新宿の街を歩き回りながら逡巡して、結局買わなかった。このベスト盤はそれから1~2年ほどしてCD化されたので、無駄に大金を払わなくて済んでまあ正解だったのだけど、そんな高額な中古レコードを買おうかどうしようか悩んだのは、後にも先にもそのときだけだった。あれから20年以上経ったはずだけど、今でもあの日のことはよく覚えている。

「忙しすぎたから」は、夏になるとまず思い出す名曲。おそらくRCのアルバムで自分が一番よく聴いたのが、これが入っている「楽しい夕に」だと思う。この曲でヴォーカルを取るのは清志郎ではなく、破廉ケンチ。RCを抜けた後は、本名の桶田賢一氏として音楽業界に残り、デビュー前のフィッシュマンズを見いだしたり、フリッパーズ・ギターにマネージャーとして関わったりしたのだという。こちらのインタビュー抜粋らしき記事を読むと、フィッシュマンズの後にフリッパーズ・ギターのマネージャーになった桶田氏が、フィッシュマンズのメンバーに「カメラ・トーク」を初めて聴かせたという話が出てくる。たしかにフィッシュマンズからは初期RCの直接的な影響を感じるけど、フリッパーズ・ギターとのつながりは、知ったときはすごく意外だった。とにかく80年代末から90年代初頭の日本で立て続けにこの2組に関わるなんて、ギターを弾けなくなってRCを辞めてからも、破廉ケンチは音楽に対する鋭敏な感覚を保ち続けていたということだろう。やはりただ者ではない。

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ブルース・インターアクションズ「ロック画報10」より、忌野、破廉、林小

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