シルヴァー・サンとナイジェル・ゴッドリッチ

シルヴァー・サンのジェームスの訃報を聞いて、昨日の記事でも紹介した、亡くなる少し前に取材されたジェームスの話が載っているインタビュー記事を読んでいたら、自分にとっては意外な名前が出てきた。プロデューサーのナイジェル・ゴッドリッチである。プロデュース作にはレディオヘッドの「OK Computer」をはじめとする諸作、ベック「Mutations」、ポール・マッカートニー「Chaos and Creation in the Backyard」、トラヴィス「The Man Who」と、90年代後半以降に自分が聴きまくったアルバムがずらずら出てくる。ポールの「Chaos~」をプロデュースする際には、ポールの作ってきたデモの曲を遠慮なく批判するなど、ずけずけと物を言って対等な共同制作の相方として渡り合ったという。90年代以降のポールでは最高傑作だと思うあのアルバムに漂う、ぴんと張り詰めた本気の緊張感は、そんなナイジェル・ゴッドリッチの紛れもない功績だろう。レディオヘッドの「6人目のメンバー」とも言われている彼が、キャリアの最初の頃にプロデューサーとして関わった作品が、シルヴァー・サンのデビューアルバムだったというのだ。「OK Computer」と同時期である。うかつなことに、自分はそのことを今まで知らなかった。


ジェームスがそのインタビューで語ったナイジェル・ゴッドリッチの仕事ぶりは、シルヴァー・サン自作のデモのサウンドを過剰に装飾せずにとてもうまく再現してくれて、ただしヴォーカルにはとても厳しかったという。「Golden Skin」の最初の一行を録音するのに1時間もかかったとか。ナイジェル・ゴッドリッチは、シルヴァー・サンの音楽を一番いい形で表現するにはどうすればいいのか完璧に把握していて、理想的なアプローチであのアルバムをプロデュースしていたのだ。次作「Neo Wave」では、レコード会社やマネージメントの方針でナイジェル・ゴッドリッチと仕事ができず(ほかのアルバムの奇っ怪なアートワークを担当しているJeff Cumminsとも)、ジェームスはそのことを後悔していると語っている。「Neo Wave」も本当に素晴らしい作品だけど、やや冗長なところも自分には感じられて、ジェームスにそんなことを言われると、「Neo Wave」にナイジェル・ゴッドリッチが関わっていたらどんな凄いことになっていただろう、と妄想してしまう。

ジェームスの訃報を受けてナイジェル・ゴッドリッチも「ショックを受け、悲しんでいる」とツイートしている。ジェームスは、本当に頭が良くて面白くて優しい人だったんだろうなあ、とシルヴァー・サンの音楽を聴いているだけでも十分に感じられる。改めて、こんなに早く亡くなってしまって、残念としか言いようがない。

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