The Beach Boys「Little Honda」はスーパーカブ

ビーチ・ボーイズが1964年に発表した「Little Honda」。当時飛ぶ鳥を落とす勢いだった彼らが、同じく当時のアメリカで大人気をさらっていた日本の小さなバイクを題材に、軽快にかっ飛ばした曲。特にホンダとビーチ・ボーイズがタイアップ契約を結んだとか、そういうことではなかったようで、ブライアン・ウィルソンとマイク・ラヴが自らホンダのバイクを題材に取り上げてくれたものらしい。このリトル・ホンダって、実際どんなバイクだったのか、自分は今まで具体的に確認したことがなかった。これは普通に知られていることかもしれないし、先に結論から言ってしまえば、今でも日本の街中をちょこまか走り回っている、おなじみのスーパーカブのことだった。


この曲について調べようと思ったきっかけは、20年前に買ったスーパーカブの本(三樹書房・2001年)。この本が引っ越し荷物から発掘されて、最近久しぶりに読み直しているところ。カブの誕生に関わった開発者の証言を集めたもので、とても面白い。その本に、曲と同名のリトルホンダというバイクが出てくる。「Little Honda」とはこれのことだったのかな、とまず思った。

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でも、どうもおかしい。発売年度をよく見ると1966年と、同曲の発表より2年後のことだ。それに、これはモペッドという、ペダルの付いた自転車とバイクの中間的な乗り物で、曲のイメージとはあまりにも違う。無段変速と書いてあるので、「1st gear, 2nd gear, 3rd gear」とシフトアップしていく運転法ではないことになる。これはこれでお洒落な乗り物だと思うけど、ビーチ・ボーイズの「Little Honda」はどう考えてもこれじゃない。じゃあ、どのバイクのことだろうと、ちょっとネット検索してみたら、ほかでもないカブのことを歌ったものだったとわかった次第。カブなら年代的にも矛盾しない。まあ、カブだって全然、歌詞にあるような「しっかりつかまってろよ!」なんてスピード感ではないけど、1段、2段、3段とギアをガシャガシャ上げていく様子は、まさしくカブの運転風景そのもの。標準的なカブは3段変速なのである。

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アメリカでそれまで「アウトローの乗り物」と見なされていた二輪車のイメージを覆すべく、ホンダがいわゆる「Nicest People」キャンペーンを展開して同国でカブを大々的に売り出し、ヒットさせたのが1963年のことだという。ビーチ・ボーイズの「Little Honda」はその翌年。当時、アメリカで「Honda」といえば「カブ」のことだったのだ。

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「ホンダに乗るのは、みんないい人」

前に書いたように、自分はかつてスーパーカブを愛していて、あちこち楽しく乗り回していたけど、近年はずっと自走不能の状態で塩漬けにしていた。そんな昔の相棒カブを今年になって復活させて、新天地に引っ越してからはまた買い物や昼食に出かけるときに活用するようになった。しばらく疎遠だった昔からの親友と、また付き合いが復活したような気分である。そんなカブに乗る楽しさを歌ったものが「Little Honda」だったと再確認して、とても嬉しい気持ちになった。

「Little Honda」はヨ・ラ・テンゴのクールなカバーも大好き。歪んだギターでオリジナルとは別の意味の疾走感を出しながら、ヴォーカルは異様に冷めているという、何ともいえないバランス。


ついでに、中村一義がカブ乗りだったことも、さっき初めて認識。中村さんにカブ、似合いすぎている。来年で「金字塔」から25年。

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