The Beatles「Don't Ever Change」

初期ビートルズ好きにとって、BBCライブ音源は絶対に外せない。正式にレコード化されなかった絶品カバー曲が目白押し。BBCライブでしかレコーディングされなかったカバー曲を聴いてて楽しいのは、ビートルズの音楽のルーツや元ネタをかなり無防備にさらけ出しているところ。初期ビートルズのアルバムにカバー曲はたくさん入っているが、エルヴィスのカバーはBBCでしか聴けないし、チャック・ベリーだってBBCでは「Johnny B. Goode」という超ど真ん中のチョイス。ひねりのない選曲のカバーをレコードにして出すのは無粋で恥ずかしい、という気持ちもよく分かるけど、BBCライブはもっと気の置けないファン向けという意識があったのか、「ガードの甘い」選曲がたくさん楽しめて、出来も良いものばかり。宇宙の真理のごとく当たり前のことを言ってしまうが、やはり初期ビートルズは最高。


そのBBCオンリーのカバー曲の中でも、自分にとって特別なのが「Don’t Ever Change」。ゴフィン=キング作で、バディ・ホリーのバンドだったクリケッツのカバー。高校生の頃、バリバリに歪む劣悪な音質の海賊盤で聴いたのが出会いだったけど、そんな極悪音質でも聴いた瞬間に恋に落ちた。この半音下降/上昇のコード進行に美しいハーモニー、初期ビートルズ好きの心を秒殺でわしづかみにして一生離さない。そしてこの曲で息の合った三度のハーモニーを終始聴かせてくれる二人は、いつものジョンとポールではなく、ジョージとポールというレアな組み合わせなのである。

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カメラマンのリクエストでポールに渋々?アイスを分けてあげるジョージ

この二人がデュオで歌う曲は珍しい。この曲のほかには、「All My Loving」のライブバージョンの間奏後ぐらいしか思いつかない。レコードではポールが多重録音でハーモニーを重ねているが、ライブではジョージが下の主旋律を受け持って、ポールが上に回る。これ以外にはちょっと思い出せない。一方、ジョージとジョンのデュオというのも「You Really Got A Hold On Me」ぐらいかもしれない(後記:別のBBCライブ曲「So How Come (No One Loves Me)」もジョンとのデュオっぽい)。それぐらいレアなので、全ジ連としては非常に貴重なのだ。「Don’t Ever Change」では、上のパートを歌うポールは意図的に声をソフトに抑えている気がする。自分だけが前に出るのではなく、相方のジョージの声も引き立たせて、ハーモニーを美しく聴かせることに重きを置いた歌い方である。ジョンがメインの曲にハーモニーを加えるポールも、こういう歌い方をする。ちょっと聴いただけではジョンのダブルトラックに聞こえてしまうぐらい、自分の声を引っ込めて歌っているのだ。ビートルズの中でも、こういうことをしていたメンバーはポールしかいない。自分が前に出るところでは思いっきり全力投球しながら、引くときはさっと引いて的確なサポートに回る。やはり、ポールのミュージシャンとしてのセンスは最初期から本当にずば抜けていたと思う。


この曲のオリジナルは、バディ・ホリーを失ったクリケッツ。ビートルズがバディ・ホリーとクリケッツの絶大な影響を受け、バンド名の元ネタ(コオロギ→カブトムシ)にもしたのは有名な話。そのことだけでなく、ジェリー・ゴフィンとキャロル・キングによる楽曲自体も、初期ビートルズのオリジナル曲がどれだけゴフィン=キング作のヒット曲群を大いに参考にしていたのか、あからさまに分かる感じである。「ビートルズっぽい」と感じる音楽のかなりの要素が、ここにすでに入っているのだ。それでも決定的に違う「何か」がビートルズのマジックなのだが、彼らの音楽は何もなかったところから突然変異的に生まれたものではないことがよくわかる。こんな大っぴらなネタばらしのような曲のカバーを、当時のビートルズがレコードにすることはあり得なかっただろう。BBCライブで一度きりこっそり公開された、貴重な宝石。この録音がゴミ箱行きにならず現代まで生き残って本当によかった。

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