The Beatles「I'm Happy Just To Dance With You」

ビートルズの「すてきなダンス」、原題の「I’m Happy Just To Dance With You」はちょっと長い上に、歌詞にある「So」は入るのか入らないのか、「Just」はどの位置に入るんだっけ、となかなか正確に思い出すのが難しい。邦題の「すてきなダンス」のほうがずっとシンプルで、すてきである。「Do You Want To Know A Secret?」とともに、当時は曲作り要員と見なされていなかったジョージにレノン=マッカートニーが「プレゼント」した曲。どちらの曲も、ジョージがちょっと王子様っぽく演出されている感じがするのが面白い。ジョージ自身が作る曲とは違った、外から見たジョージ観で作られた曲。まだ20歳そこそこの、曲は書けないけどビートルズいちハンサムな末っ子という立ち位置がうかがえる「すてきなダンス」、これはこれで自分はとても好き。ジョンの見事なリズムギターが曲をぐいぐい引っ張っていて、ギターが手の届くところにあれば絶対に真似して弾いてしまう。


先日、ザ・サークルの記事を書いたときにこの曲のカバーについて触れて、本家のこともあらためて思ったのでこの記事を書いている。「すてきなダンス」は「A Hard Day’s Night」に収録されたほかにはBBCライブで一度披露されたきり、と思いきや、ごく短い間だけライブツアーのセットリストに載っていたらしいことを何年か前に初めて知った。64年10月~11月に行われた英国ツアーでだけ、ジョージはいつもの「Roll Over Beethoven」や「Everybody’s Trying to Be My Baby」ではなく「すてきなダンス」を歌っていたのだ。こういうことを知ってしまうと、そのライブ音源をものすごく聴いてみたい。でも、そのときネットで探してみた限りでは、映像も音源も見つからなかった。50年以上も前に1か月ほど演奏されただけのもの、記録が残ってなくても仕方がない。それが、今回あらためて探してみたら、それらしきものが出てきたのだ!

もちろん、全然きちんとしたライブ音源ではない。音質は劣悪、ビートルズの演奏より観客の悲鳴の方がよっぽど凄い迫力である。音楽として聴くにはかなりの脳内補正が必要。それでもノイズの嵐を耳でふるい分ければ、たしかにここではジョージが「すてきなダンス」をライブで歌っているようなのだ。アルバムでもBBCでもジョージのヴォーカルはダブルトラックだけど、ここではそんな加工がない生の声に聞こえるし、ビートルズの演奏やコーラスにも生々しさを感じるので、ありがちなフェイク音源ではなく本物のライブじゃないかと思う。ちょっと音が悪すぎて本当に本物だという確信が持てないのだけど、たぶん本物。すごいものが残っていたと思う。この「すてきなダンス」が演奏された1964年英国ツアー当時のセットリストを見ると、1日2公演のライブが切れ目なしに毎日延々と入っていて、演奏曲目も毎回必ず同じ。観客は金切り声を上げるばかりで演奏を聴いていない。もう言われ尽くしていることではあるけど、これはウンザリもするだろうよ、とあらためて思わずにはいられない。
1964年10月のプリマス公演の様子。BBCニュースで取り上げられた発掘映像らしい。演奏シーンは「Twist And Shout」がちらっとだけ。

それにしても、このレノン=マッカートニーお仕着せの「すてきなダンス」から2年ちょっと経てば、ジョージは「Revolver」に「Taxman」を含む自作3曲の収録を果たし、単身インドに渡ってラヴィ・シャンカルに教えを授かり、翌年には「Within You, Without You」を作り上げるに至るのだ。64年当時から、最年少のジョージがすでに内に秘めていたポテンシャルは凄かったはず。おそろしい末っ子!である。

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タバコを吸ったり、後ろを向いたりと、「A Hard Day’s Night」のジャケで一番奔放に振る舞っているのがジョージ

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