The Beatles「Rain」

あんまり毎日雨続きなので。

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傘は差しているが、もちろん「Beatles ’65」に「Rain」は入ってない。ビートルズ65とビートルズ66は、えらい違いなのである。自分が一番愛しているのは64~65年のビートルズだが、66年のビートルズの凄さを一曲に凝縮したのが「Rain」で、曲単位ではビートルズ全曲の中で確実に十本の指に入る、自分にとって大切な曲。

雨に翻弄される人々の心を歌った歌詞のテーマはジョージの「Blow Away」と共通するものがある。天気に翻弄されるがままに浮いたり沈んだりする心を素直に歌うジョージに対して、ジョンは「雨が降ろうが晴れようが、単なる心の状態に過ぎない」と歌う。歌詞の最後の「Can you hear me?」は、自分たちの歌が聞こえているのかどうかもわからないライブ観客への呼びかけをビートルズ自身の曲に引用しているのだが、ここではまるで雨雲の上から下界に語りかけるように歌われる。この時期のジョンはちょっと人間離れしている。

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「Can you hear me?」(アンソロジー本より)

この曲ではテープ操作のギミックが2つ使われている。ひとつは有名な逆回転ヴォーカル。しかしこれ、自分は逆回転と言われるまで気が付かなかった。英語を解さない耳で聴くと、逆回転の部分は単に曲のエンディングによくあるアドリブ唱法に聞こえるのである。もうひとつのギミックは、リズムトラックを元の録音より少しスローにして再生することで、音に深みを出していること。こんなことをやっていたとは、こちらの方に自分は驚いた。この曲の全体を覆っている、ぼわーんとした気怠い雰囲気は、テープ操作のたまものだったのだ。再生速度を上げることで曲をアップテンポにして活気づけるという裏技はポップスの世界で昔から使われていたようだけど、逆にヘヴィーさを出すために速度を下げてしまうという発想はさすが66年のビートルズ、自由すぎる。

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「Paperback Writer/Rain」のプロモフィルム撮影時のジョージ。スターのオーラが凄い。

この曲の演奏面での主役は何と言ってもリンゴ(ポールのベースも凄いけど)。フィルイン叩きまくり、張り詰めたテンションが最高である。リンゴ一世一代の暴れ太鼓。イントロのスネアが空気を震わせた瞬間、世界ががらっと一変してしまう。リンゴにしては演奏のタイミングが甘いという指摘も見かけた。元々もう少し速いテンポで叩いていたドラムの演奏がスロー再生されることで、リズムの小さなずれが拡大されるのだと思う。ここが気になるというのは、とても精密なリズム感覚を持った方なのだなあと感心してしまった。自分は全然気付かない。自分も一応ドラマーを目指していた時期があったんだけど、ものにならずに終わったのはやっぱりリズム感が甘いのだ。いずれにしても、リンゴのドラムの歌い方はほんとにリンゴ独特のもので、この曲ではイントロからフェードアウトまで存分に堪能できる。リンゴ最高。

雨が突然降り出せば人々は頭を覆って逃げ惑い、雨が上がってまぶしい陽光が降り注げば日陰に滑り込んでレモネードをすする。灰色の雨とレモネードの対比は鮮烈で、この曲が作られてから50年以上経ったいま聴いてもまざまざと脳裏に描き出されるし、今から50年経っても同じことを感じるだろう。これこそ、タイムレス。

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