While My Guitar Gently Weeps (Take 27)

ホワイトアルバム50周年記念盤のスーパーデラックスエディションに入っているセッション音源。こんなのが公式に聴ける時代にとうとうなってしまったのである。ホワイトアルバムのセッション音源なんて、もう30年ほど前から「レコーディング・セッションズ」を読みながら、どんな音なんだろうとどれだけ妄想したことか。本来ならちゃんと解説を読みながら気合いを入れて聴きたいのだが、最近やたら忙しくて疲弊しており、いつまで経ってもその気合いが入りそうにない。そもそもCD買ってないから解説も持ってないし。そうこうしているうちに日々は過ぎ、いつまでも聴かないのも何だなと、先日やっとSpotifyで聴いた。CD3枚分の長丁場、気合いは入れずに作業のBGMに流した。

そんな風に何となく聴き始めてしまったが、While My Guitar Gently Weepsのテイク27、これだけは流し聴きというわけにはいかなかった。アレンジはホワイトアルバムのバージョンと同じ。しかし、いつもと違うフレーズの、明らかにエリック・クラプトンとわかるギターが切り込んできたときは心の準備ができておらず、えっ、えっ、ちょっと待って!となってしまった。


この曲の成り立ちは長年にわたって何としても知りたい謎だった。あの静謐なアコースティックバージョンから変貌を遂げていく過程、そしてあのクラプトンのソロがどのように生み出されたのか。あの完成度の高すぎる一連のフレーズはほんとにアドリブ一発だったのか。今回、テイク27が聴けるようになったことで、ギターの謎はだいぶ解けた気がする。

「レコーディング・セッションズ」の本は、自分がまだ高校生だった80年代末に出版されて即座にほぼLPサイズの原書を買って以来、長年のバイブルなのだが、このテイク27で実際に聴けるものはあの本に書いてある内容と違う。本では、ビートルズの4人がこの曲のベーシックトラックの録音を9月5日に済ませていて、その翌日の9月6日、クラプトンがジョージに頼まれてソロをオーバーダブしたことになっている。しかし、このテイク27はどう考えてもビートルズとクラプトンが一緒にライブで演奏しているのである。ソロのフレーズも、一音半チョーキングは入っているけどアルバムバージョンと全然違う。やはりアドリブだったのか。ソロの後、ジョージが妙に震える声で歌い出し、演奏が途中で止まる。ポールか誰かが「Hold it, Eric!」なんて言ってる。その後、「ちょっとスモーキーをやってみたんだ」とジョージが話す声も入っている。もちろんスモーキー・ロビンソンのことだろう。なるほど……いやあ、本当にクラプトンと一緒に生でやってるよね、これ。あの4人とクラプトンで、ソロも含めて一発録りだったんだ。おおおーっ!である。これはすごいよ。

クラプトンのギターソロ、当日いきなりスタジオに連れて行かれて、完成したベーシックトラックを聴かされて、これにソロを入れてくれと言われてあんなフレーズがパッと弾けるんだろうかと常々不思議に思っていたが、ビートルズと一緒に演奏してテイクを重ねていきながらフレーズを完成させていったのだとすると、まだ納得がいくのである。それにしても凄いけどね。この曲のレコーディングについて参考にした「The Beatles Bible」の記事によると、クラプトンが使ったレスポールは前月にジョージからもらったものだそうだ。ギターを泣かせたのはクラプトンだったが、泣いたギターはジョージのものだったと。当時クリームで多用していた、高域を絞ったウーマントーンではなく、リアピックアップのガツンとしたトーンで弾いている。クラプトンのギター、自分はこのレスポールのリアをオーバードライブさせた音がやはり一番好き。この一番好きな音色で弾いていることが、エフェクトのかかってないすっぴんの音でよくわかる。そして、ビートルズとジョージ・マーティンはミックス段階で、このギター名人の一番いい音色をADTというエフェクトで容赦なくべろべろにしてしまう。まさしく神をも恐れぬ所業だが、これで初めて彼ららしい音になるのだから、ビートルズとマーティン先生はやはり悪魔というか、何というか。

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