さらば当地の桜の花

昨日、不動産屋さんから連絡があり、住宅ローンの審査に通ったとのことで、新居の契約はどうやら無事にまとまりそうである。大きなハードルをひとつ越えた。よかった。この冬と春の境目のもやもや不安定な気候と同じぐらい落ち着かない気分で過ごしていた3月だったけど、ずっと不安ではあったものの眠れないほどではなかった。心の底では何となく、この話は大丈夫だと信じていたのだ。この新居候補に出会うまでの精神状態はなかなかのもので、まだ真っ暗な明け方に必ず目が覚めて、不安感に押しつぶされそうになって眠れなくなる日々が続いた。物件探しの中でこの家が浮上してきたときには一気に希望の光が見えた気がしたし、2月下旬に実際に現地を訪れて内見させてもらい、ここなら、と確信した。立地がとにかく良いのだ。旧居があった土地からは峠一つ越えた地域にあって、以前から馴染みのあったところ。去年12月の時点では旧居と同じ地域に戻るつもりでいて、そことは峠一つ分だけずれるけど、まったく文句はない。家を見に行った日はちょうど、ジョージの生誕80周年記念日だった。そのことも自分にとっては力強い後押しになった。その家で暮らせるのなら、ジョージがついていてくれる気がしたのだ。今年の2月25日のことは一生忘れないだろう。

今暮らしている土地では、早くも桜が満開を過ぎかけている。この土地で桜の花が見られたのは、去年の春が初めてだった。一昨年の春、引っ越してきたばかりの4月初頭には、すでに花がすっかり終わっていたのだ。寒冷地の旧居ではまだ咲いていなかったので、その年の春は桜のない春だった。そして来年の春、3年目の桜が咲く時期には、自分はおそらくここにはもういない。池の水鳥たちを背景に満開の桜が並ぶ、ここの景色もかなり気に入っていたけど、2回しか見られずに当地を去ることになりそうだ。2年前に来たばかりなのに、早くも最初のさよならである。こんなあっけなさすぎるさよならは、この土地でもう最後にするのだ。

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今年は満開の時期に悪天候が続き、一番綺麗なときの桜が見られないのではないか、と少しじりじりしていた。満開になったと思ったらあっという間に散ってしまう桜の花は、ことさら「Be here now」を感じさせる。少しぐらい天気が悪かろうが、今、ここで見ておかなければ、来年まで会えないのだ。まあ一年なんてすぐといえばすぐだけど、桜の花が楽しめる状態で来年の春まで生きている保証は、どこにもない。見たいものは、しかるべきときに見ておかなければ。それも、この土地の桜の花とまた会うことは、たぶんもう永遠にないのである。今朝も花曇りだったけど、ここの花をちゃんと見られて良かった。さよなら、2回しか見られなかったけど今年もいい桜だった、と思いながら、池のほとりに咲く桜の花とお別れした。すでに葉桜になり始めていた。

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