The Beatles「Beatles VI」

今月は当ブログの記事がろくに書けない。精神的にも時間的にも余裕がなさすぎるのだ。もうすぐ前回記事から一週間経つし、何かさらっと書きやすいものを書いてしまおう。となると、今の状態で書けるのはビートルズ話しかないのである。昨晩聴いたアルバムのことでも書こうじゃないか。

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1965年に出た米キャピトル編集盤「Beatles VI」。自分が持っているのはLPではなく、米国盤CDボックスセット「The Capitol Albums」に入っているもの。大好きな「Beatles For Sale」から6曲、次作の「Help!」から「For Sale」っぽさのある地味目の曲を3曲、アルバム未収録曲2曲からなる、全11曲。自分好みの曲が多くて楽しいアルバムなのだけど、なぜ「6」なのだろうか。収録曲は4作目と5作目からの寄せ集め。Wikipediaで確認してみれば、キャピトルから出たアメリカ盤としても、6作目ではなく7作目だという。一体「6」の要素はどこにあるのか。自分が持っている2巻8枚組の「The Capitol Albums」の中では、「VI」はたしかに「Meet The Beatles」「The Beatles’ Second Album」「Something New」「Beatles ’65」「The Early Beatles」に続く、通算6番目のアルバムである。ドキュメンタリー盤の「The Beatles’ Story」を除けば、6作目ということになるのだろう。しかし、「VI」の裏ジャケのディスコグラフィには「The Beatles’ Story」がしっかり載っていて、このアルバムが当時のキャピトルにとって番外編というわけでもなさそうなのだ。考えれば考えるほど、謎である。

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いずれにしても、ビートルズ側にしてみれば、5作目の「Help!」もまだリリースしていない段階。勝手に「ビートルズ6」なんてアルバム出すんじゃねえよ、と言いたいところだったろう。しかも、収録曲のストックが足りないから至急新曲を2曲送れ、と米キャピトルがビートルズ側に無理強いをしていて、その結果が「Bad Boy」「Dizzy Miss Lizzy」なのである。例によってマーク・ルイソン著の「The Beatles Recording Sessions」をひもといてみれば、この2曲の録音は1965年5月10日の夜に3時間半でやっつけている。オーバーダブもミキシングもその晩のうちに終えて、翌日には航空便でアメリカに送られたという突貫ぶり。ちなみに前回のレコーディングセッション(4月13日)では「Help!」、次回(6月14日)には「Yesterday」の録音に取りかかっている。どちらも、押しも押されぬビートルズの代表曲として永遠に残るもの。本来なら、当時の4人はもうラリー・ウィリアムズのカバーをやっつけている場合ではなかったのである。「Bad Boy」と「Dizzy Miss Lizzy」は、おそらくこのアルバムがなければ正式にレコーディングされることはなかっただろう。そういう意味では、ビートルズ史を少しだけ動かした編集盤とも言える。「Bad Boy」に関しては、自分もギター覚えたての頃にジョージのリードギターをコピーして練習した思い出があって、自分ギター史にも刻まれてしまっている。



「Beatles VI」の良いところは、「64~65年ビートルズのアルバム曲」を落ち着いて堪能できるところ。なにしろ、ベスト盤に入るような曲は「Eight Days A Week」1曲だけで、ほかの10曲はどれもこれも地味な存在。しかしビートルズの場合、特に「Rubber Soul」ぐらいまでの時期で自分が心から愛する曲は、圧倒的に「アルバム曲」なのである。「I Don’t Want To Spoil The Party(パーティーはそのままに)」なんて、自分の「好き」が全部詰まっているといっても過言ではないほどだ。「Help!」からジョージの「You Like Me Too Much」が入っているのも嬉しい。ビートルズのジョージ曲の中でも一番話題にならなさそうな地味さだけど、コード進行、メロディーともに、あえて斜めに進んでいく感じがどうしようもなくジョージである。ミドルの「If you leave me…」から、Aメロの「I will follow you」に戻るところの軽やかな陰りがたまらなく好き。やっぱり、ジョージは最高。

ジョンを中心としたビートルズの3声コーラスの良さが凝縮された「Yes It Is」も、フィル・スペクターばりのリバーブがたっぷりかかったキャピトル盤の疑似ステレオミックスで久しぶりに聴いて、自分にとってこの曲は深いリバーブにぼわーっと覆われた幻想的な雰囲気が大切だったのだと再認識した。87年のビートルズCD化まで、日本で普通に聴けたミックスは、下のドライなステレオバージョンではなかったのだ。

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