寂しい線路

家のそばには鉄道線路がある。電車の通過音が日常的に聞こえて、引っ越してきた当初は落ち着かなかったけどすぐに慣れた。ところが、先週末の台風19号の被害で、ほとんどの列車がしばらく運休している。東京や成田に行くときにいつも乗る特急は全面運休、たまにローカルな普通列車が来るだけ。いつも聞こえる音がしなくてしーんと静かなのがかえって落ち着かなく、寂しさを感じる。寂しいだけならまだしも、現状では高速道路もまっすぐ東京に抜けられず大迂回を余儀なくされていて、電車でも車でも首都圏への行き来が困難になっている。さしあたって上京する用事がなくてほんとに良かった。9月の台風15号では、千葉県が深刻な被害を受ける前日に成田から自宅に帰ることができた。帰国があと一日遅ければ空港で一夜を明かすところだった。今回の台風も、自宅に閉じこもっていられたから良かったけど、災害発生レベル、避難寸前まで行って相当なニアミスだった。いつまで運良く逃げおおせられるか分かったものではない。

台風15号のとき、自分が泊めてもらったばかりの父の農園ではテントや作物の支柱が倒れる被害を受け、テントは破損して買い換え。その教訓に学んだ父、今回はしっかり事前の備えをしておいたので無事だったとのこと。災害とは幸いにも無縁だった自分も、今年は縁の深い土地が被災することが相次いでいて、ひたひたと近づいてくる脅威を感じずにはいられない。海面温度の上昇で台風が強力化しやすくなり、進路も変わってきているという。本当にこうなると「まさか自分が」「うちの地域に来るなんて」では済まされなくなってくる。とある科学館で、地球温暖化が進むと未来の世界はこんな風になってしまいます、という恐ろしげな地獄絵図のシミュレーションを見たことがあるが、あれがもうすでに現実化しているではないか、と思ってしまう。……まあ、こういうことも含めて万物は移り変わっていくので、どんな変化にも適応して生き延びるしかない。簡単なことではないけど、少しずつでも。

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大規模な浸水被害が大きく報道された新幹線の車両基地。4年前に訪れて陸橋の金網越しに写真を撮っていた。千曲川沿いの堤防道路を車で通ったことも何度かある。あのへんにはリンゴ畑がたくさんあって、今ごろは真っ赤に色づいた可愛いリンゴがたくさんなっていただろうに、千曲川の氾濫でリンゴ農家が壊滅的被害を受けたというニュースに胸が痛む。今年は、自分が見てきたたくさんの風景に台風が爪痕を残していった。

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