The Beatles「Love Me Do」シングル発売60周年記念:当時の宣伝用資料に載っていた文章の和訳

今日、2022年10月5日は、ビートルズの「Love Me Do」のシングル盤が1962年に英国で発売されてから、ちょうど60年。つまり、レコードデビュー60周年記念日である。自分は今から10年前、つまり50周年のときに、「The Beatles Recording Sessions」のこの曲の項に載っていた宣伝用資料を和訳したものをTwitterに上げたことがあった。今度は60周年記念に、これを訳し直して当ブログに改めて載せることにした。「IF YOU CAN’T BEET ‘EM…」というタイトルの短い文章である。

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ビートル退治にお困りなら……

「ビートルズって言ったのかい、ジョージ。もちろん知ってますとも。おじいさんが生きていた頃は、家に入ってこないようによく粉をまいていたものですよ」

「違うよおばあちゃん、虫じゃなくて、BEATLES。ティーの前にエイって書くんだ」

「干し草(ヘイ)だったかしら?いいえ、あれは確かに粉だったわよ。それに虫がティーを飲むなんて聞いたことがないわ」

「だから虫じゃないったら、ビートルズだよおばあちゃん。4人組のグループなんだ。パーロフォンからデビューするんだって」

「うちの居間(パーラー)にフォンなんてないわよジョージ。とにかくもう虫の話はよしてちょうだい。気持ち悪いったらありゃしない、大きな黒い虫なんて」

「ビートルズはブラックじゃなくて白人だよ、おばあちゃん。しかもイギリス人だよ!」

上記の通り、耳の遠いおばあちゃんとビートルズファンの孫のかみ合わない会話、というすっとぼけた内容。これ、「Recording Sessions」のキャプションには「ひどいジョークと駄洒落」なんて書いてあるけど、いかにも英国っぽいユーモアが効いていて、とても面白いと思う。まだ全国的には無名だったロックバンドのデビュー曲の宣伝資料に、こんな人を食ったコントが紛れ込んでいたとは。デビュー当時から、ビートルズが広報担当を含めてシャレのわかる有能なスタッフに恵まれていたことの明白な証拠ではないか。これを執筆したのは、ブライアン・エプスタインのもとでビートルズの広報担当として1968年まで働くことになるトニー・バーロウだという。初期3作のアルバム、「Please Please Me」から「A Hard Day’s Night」までのジャケット裏面に記載されているライナーノーツも、バーロウのペンによるもの。「Love Me Do」は、当時の英国チャートでは17位止まりだったけど、翌年から始まる未曾有の大爆発に向けた下地は、デビュー当時からしっかり整っていたのだ。こうして今日から、ビートルズのレコードデビューから解散までの道のりを60周年記念でたどる日々がまた始まるのである。


「Love Me Do」といえば、ビートルズに加入して間もなかったリンゴがドラムを叩かせてもらえずタンバリンに回った、というエピソードがあまりにも有名だけど、60年前の10月5日に発売されたシングルバージョンでは、ちゃんとリンゴが叩いている。そのリンゴ、つい最近のニュースによれば新型コロナに感染してしまったようで、ツアー日程を延期して療養中だという。82歳のリンゴ、ちょっと心配だけど一日も早く回復して、また元気な姿を見せてくれますように。

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