印西市は千葉のインドなのか

日曜日の明け方、呼び鈴の音で目が覚めた。まだ暗い午前4時。こんな時間に来客などあり得ない。寒いし、布団から出て応対するのも嫌なのでしばらくじっとしていたら、それ以上何も起きなかった。さすがにしばらく眠れなかったが、どうにか二度寝して、朝になって玄関の様子を見た。特に変わったところなし。呼び鈴は確かに鳴っていた。うちのは1回押すと3回続けて鳴るので聞き間違えることはない。泥棒未遂?そもそも人間だったのか?

インドで暮らしていた頃は毎朝明け方に呼び鈴を鳴らされていたことがあって、それを思い出した。べつに嫌がらせを受けていたわけではない。新聞配達である。なぜ鳴らすかというと、新聞を盗む輩がいるから。いま配達した新聞はすぐ家の中にしまっとけ、という新聞配達人の配慮だった(そのうち慣れて目も覚めなくなったけど)。盗んだ新聞は古紙回収に持って行って、換金して生活費のわずかな足しにするのだ。インドでは中流階級が暮らす地域に住んでいたが、むき出しの貧困はすぐそばにあった。よく、自分が日本ではなくインドのスラムの真ん中に生まれ落ちていたらどんな人生だったろうと想像を試みたものだ。とても想像はできなかった。少なくとも、生まれた場所が日本だったのは自分の力ではない。スラムで貧しい暮らしを強いられるのも怠け者だからではない。貧乏なのは怠けているからだと上から目線で言うことだけは絶対にできない。

さて、インドといえば千葉県印西市。いや、印度じゃないよ印西市。


この印西市のPR動画、けっこう面白い。のっけから「いぇーいんでぃあなひんへー!」(ここは印度じゃない!)と本物のインド人が話すヒンディー語が心を掴む。インドと間違えて印西市にやってきたインド人の若者が、同じくインド人の女性と出会い、住みよさNo.1の印西市で幸せに暮らす、という内容。そんな風にインドと間違えてやってきたインド人がたくさん住み着いて、東京の西葛西みたいにインド人口が増え、現地仕様のインド料理店やインド食材店ができ、印西が千葉のインドになったらいいと思う。印西の名前の由来は印旛沼の西にあるからだと思うけど、インド沼ならぬ印旛沼で沐浴するインド人の姿も見られるかも。素敵じゃないか。

現実の話としては、普通のインド人が日本への渡航費用を捻出してビザを取得するのは相当ハードルが高い。インドにいたとき、自分が日本人と知ると、日本で仕事の口はないか、ビザはどうすれば取れるんだ、と聞かれることが本当に多かった。これについては自分にはまったく何もできなくて、返答に困った。

自分は小学生時代の一時期、千葉県民だったことがあって、印旛沼の近くに住んでいた。印旛沼に注ぐ川で祖父とヘラブナ釣りをした思い出もある(魚が釣れた思い出はない)。当時、印西のほうには縁がなかったけど、最近は出張の帰りに成田空港からJRでなく京成スカイライナーを利用することが続き、印西市をよく通過する。印西から成田空港まで電車一本。印西で暮らすインド人は里帰りも楽だろう。

我が第二の故郷のひとつ、ムンバイはインドの西海岸にある。印度の西という意味ではムンバイも印西といえなくもない。ああ、印西はムンバイへのゲートウェイなのかもしれない。インザイとムンバイ、何となく韻も踏んでるし。


ムンバイ、2014年10月

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