仕事のため海外に送り込まれて結果を期待されること

TFCからジェリーが脱退するというニュースを聞いたのは前回の米国出張まっただ中だった。出張中の自分の身の上にかなり重ね合わせてしまったことを覚えている。自分は飛行機恐怖症じゃないけど、年を取るほど飛行機旅はつらくなっていく。この米国出張仕事が始まったのは5年前だが、すべてが最初の頃より確実にしんどい。前々回の来日公演で見たジェリーの姿も、どこかバンドから孤立していて、ひとりテンションが低いように感じた。飛行機で外国に行って仕事をすること。時差があり母国と何もかも違う異国の地で最大のポテンシャルを発揮して期待された仕事をこなさなければならない。ちゃんとできなければ、自分は単なる足手まとい、どうしてここにいるのだろう、とどんどん落ち込んでしまう。観客として見ていてテンションの低さがわかった前々回来日のジェリーも、自分が日本にいる理由がわからないような状態だったのではないか、と身につまされてしまったのだ。

仕事のためにひとり海外にいると特殊な精神状態になる。不安と孤立感にさいなまれる。期待に応える仕事ができていると実感できたときはテンションが上がる。アップとダウンの振幅が激しい。精神的な疲労を鎮めたいがためにお酒をたくさん飲んでしまう。これはいつまでも続けられない、もうそろそろ降りなければならないと思う。ロックバンドの伝記など読むと必ずといっていいほど、ツアー生活で疲弊して存続の危機を迎える局面が出てくる。生活の本拠地を離れて、自分にできる最高の結果を求められるのは本当にしんどいのである。呼ばれた期待に応える仕事ができたぞ!というときはとても充足できるのだが、役立たずのお荷物になっていると感じると本当に落ち込んでしまう。呼ばれればうれしいし、呼んでもらえる限りは逃げてたまるかという気持ちがあるので、降りたくない。しんどいから降りるという決断もまたつらいのだ。

つらい決断をしたジェリーが痛手を乗り越えて穏やかな生活を取り戻し、彼だけが生み出せる美しい音楽をこれからもずっと作ってくれることを願っている。

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